コラム:米中対立で逆風の小売り業界、ウォルマート上方修正の訳

コラム:米中対立で逆風の小売り業界、ウォルマート上方修正の訳
 8月15日、米中の貿易摩擦激化で米国の小売り各社は逆風に立たされているが、ウォルマートは今年度の業績見通しを上方修正した。写真はメキシコ市のウォルマート店舗内。2018年撮影(2019年 ロイター/Edgard Garrido)
Jennifer Saba
[ニューヨーク 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の小売り業界は、非常に厳しい状況に直面している。しかし、最大手のウォルマートは何が起きても乗り切ることができるようだ。少なくとも業績の面ではそのように見える。
時価総額3150億ドル(約33兆円)の「巨人」は、自社の店舗で銃乱射事件が相次ぎ、銃の販売方針を変えるよう圧力を受けているものの、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争の逆風に打ち勝つ、十分なしぶとさを備えていることを示しつつある。
百貨店のメーシーズなどライバルは、最近の業績不振の原因を天候不良に押し付けている。金融市場の動揺も不利に働いている。
しかし、ウォルマートが15日発表した5─7月期決算は、食品や玩具、健康・化粧品の販売が好調で、国内の既存店売上高が前年同期比3%近く増えた。オンライン販売は売上高が37%増加し、今年末までに国内顧客の75%で翌日配送を実現するとの目標を既にクリアしてしまった。
米中通商紛争は問題を引き起こしているが、ウォルマートは事前の準備で業績悪化を回避したのかもしれない。ウォルマートは今年春には、一部中国製品の輸入関税が25%に引き上げられれば部分的な値上げを強いられると警告していた。
ウォルマートの幹部はトランプ政権の対中輸入関税引き上げ「第4弾」について、影響はもっと大きくなると警鐘を鳴らす。ただ、ウォルマートは影響を抑えようと納入業者と既に対応を進めている。
実際、ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)はかなり自信があるようで、今年度の業績見通しを上方修正した。15日の米株式市場で同社の株価は一時6%近く急騰した。
ここ最近の株式市場の動きや、債券市場で長短金利が逆転したことを考えると、これは行き過ぎかもしれない。しかし、ウォルマートにはほかにもプラスの材料がある。売上高の半分以上を食品が占めているのだ。
必需品である食品が、他の商品に比べて景気後退への抵抗力が強いのは間違いない。ウォルマートは価格に敏感な消費者をさらに獲得できる位置を確保し、嵐の中の避難場所になる可能性さえある。
●背景となるニュース
*ウォルマートが15日発表した5─7月期決算は純損益が36億ドルの黒字だった。前年同期はブラジル事業の売却が響き、8億6100万ドルの赤字だった。1株利益は1.26ドルで、リフィニティブがまとめたアナリスト予想の1.22ドルを上回った。
*売上高は1.8%増の1300億ドル。米既存店売上高は2.8%の増加。オンライン販売は37%の増加だった。
*ウォルマートは2019年度(20年1月末まで)の米既存店売上高、営業利益、1株利益の見通しを引き上げた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.