コラム:米中対立で逆風の小売り業界、ウォルマート上方修正の訳
Jennifer Saba
[ニューヨーク 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の小売り業界は、非常に厳しい状況に直面している。しかし、最大手のウォルマートは何が起きても乗り切ることができるようだ。少なくとも業績の面ではそのように見える。
時価総額3150億ドル(約33兆円)の「巨人」は、自社の店舗で銃乱射事件が相次ぎ、銃の販売方針を変えるよう圧力を受けているものの、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争の逆風に打ち勝つ、十分なしぶとさを備えていることを示しつつある。
百貨店のメーシーズなどライバルは、最近の業績不振の原因を天候不良に押し付けている。金融市場の動揺も不利に働いている。
しかし、ウォルマートが15日発表した5─7月期決算は、食品や玩具、健康・化粧品の販売が好調で、国内の既存店売上高が前年同期比3%近く増えた。オンライン販売は売上高が37%増加し、今年末までに国内顧客の75%で翌日配送を実現するとの目標を既にクリアしてしまった。
米中通商紛争は問題を引き起こしているが、ウォルマートは事前の準備で業績悪化を回避したのかもしれない。ウォルマートは今年春には、一部中国製品の輸入関税が25%に引き上げられれば部分的な値上げを強いられると警告していた。
ウォルマートの幹部はトランプ政権の対中輸入関税引き上げ「第4弾」について、影響はもっと大きくなると警鐘を鳴らす。ただ、ウォルマートは影響を抑えようと納入業者と既に対応を進めている。
実際、ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)はかなり自信があるようで、今年度の業績見通しを上方修正した。15日の米株式市場で同社の株価は一時6%近く急騰した。
ここ最近の株式市場の動きや、債券市場で長短金利が逆転したことを考えると、これは行き過ぎかもしれない。しかし、ウォルマートにはほかにもプラスの材料がある。売上高の半分以上を食品が占めているのだ。
必需品である食品が、他の商品に比べて景気後退への抵抗力が強いのは間違いない。ウォルマートは価格に敏感な消費者をさらに獲得できる位置を確保し、嵐の中の避難場所になる可能性さえある。
●背景となるニュース
*ウォルマートが15日発表した5─7月期決算は純損益が36億ドルの黒字だった。前年同期はブラジル事業の売却が響き、8億6100万ドルの赤字だった。1株利益は1.26ドルで、リフィニティブがまとめたアナリスト予想の1.22ドルを上回った。
*売上高は1.8%増の1300億ドル。米既存店売上高は2.8%の増加。オンライン販売は37%の増加だった。
*ウォルマートは2019年度(20年1月末まで)の米既存店売上高、営業利益、1株利益の見通しを引き上げた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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