コラム:ECB新総裁、政策決定見直しが初仕事 透明性高まるか

コラム:ECB新総裁、政策決定見直しが初仕事 透明性高まるか
11月11日、欧州中央銀行(ECB)のラガルド新総裁は、他の主要中銀に比べて不透明なECBの金融政策決定過程を、少し見えやすくする可能性がある。写真は4日、フランクフルトのECB本部に到着し、記者の質問に答えるラガルド氏(2019年 ロイター/Ralph Orlowski)
Swaha Pattanaik
[ロンドン 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド新総裁は、他の主要中銀に比べて不透明なECBの金融政策決定過程を、少し見えやすくする可能性がある。主要な政策決定について公式な採決を導入することで、変化をもたらすかもしれない。
ラガルド氏は就任最初の仕事として、金融政策の決定方法について協議することを望んでいる。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、同氏は今週、ECB理事会メンバー4人から変更案を受け付ける予定だ。このうち少なくとも1人が公式な採決の導入を提案する意向を示している。
ECBの政策決定過程は米連邦準備理事会(FRB)やイングランド銀行(BOE、英中銀)に比べて非公式な側面が大きい。FRBとBOEは採決を行い、個々のメンバーの投票内容を公表している。ECBの現在の慣行は、各理事会メンバーに政策についての意見を尋ねる方式。中には政策提案に対して明確な賛成もしくは反対を表明する者もいるが、その他のメンバーは曖昧な意見を少し口にするだけで、その後はコンセンサスに従う意向を示す。総裁が採決の実施を求めるのはごくまれなケースだけだ。
ECBが他の中銀ほど透明性を受け入れていないのには、妥当な理由がある。理事会メンバーは母国の利害を離れ、ユーロ圏全体にとって何が最善かを考えることになっている。討議内容を秘密にした方が、母国で批判される恐れなく母国の利害を超越した議論をすることが容易だ。
しかしECBが9月に発表した新たな緩和策を巡って意見対立があらわになったことで、こうした理屈が成り立ちにくくなった。クノット・オランダ中銀総裁などの理事会メンバーは緩和決定への反対姿勢を明言した。しかし首尾一貫していないメンバーもいる。あるユーロ加盟国中銀の関係者によると、一部のメンバーは理事会では反対を表明せずにおいて、その後緩和策への批判を公に展開した。理事会で異議を唱えた事実だけ公表し、最終的にコンセンサスに従ったことは明らかにしなかったメンバーもいた。
公式な採決が導入されれば、このような立ち回りの余地は狭まるだろう。採決結果の公表を求める圧力は強まるだろうが、ECBは、例えば匿名の投票結果だけを開示するといった妥協が可能だ。多少の透明性は透明性が無いよりましなだけでなく、透明性が高過ぎるよりも良いかもしれない。
●背景となるニュース
*10日付のFTによると、ラガルド新ECB総裁は政策決定方法の見直しを求める声にこたえる見通し。理事会メンバーは金利決定における公式な採決の導入など、改革の必要性を訴えるとみられる。
*ECB理事会メンバーであるユーロ加盟国中銀総裁4人はFTに対し、金融政策決定について毎回採決を行うことや、総裁があらかじめ政策案を提示しないようにすることを、13日の理事会で提案する方針だと話した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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