コラム:フェイスブックの政治広告問題、全面撤退が賢明か

コラム:フェイスブックの政治広告問題、全面撤退が賢明か
 10月15日、7月13日から10月10日までの90日間にフェイスブックが得た政治広告収入は約1億3600万ドルにのぼる。写真は議会の公聴会で話すフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO。2018年4月11日、ワシントンで撮影(2019年 ロイター/Aaron P. Bernstein)
Gina Chon and Jennifer Saba
[サンフランシスコ/ニューヨーク 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - フェイスブックは政治広告の問題に悩まされ続けているが、魅力的な解決策がある。政治広告の掲載を全面的に中止するのだ。
同社は米共和、民主両サイドによる格好の標的だ。直近では、米大統領選の民主党有力候補であるウォーレン上院議員から一撃を見舞われた。議員は、フェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)がトランプ大統領の再選に支持を表明した、とする虚偽広告をわざとフェイスブックに掲載した。同社が利益を追求するあまり、疑わしい広告の事実検証を怠っていることを示すのが狙いだ。フェイスブック側は、言論の自由に鑑みて政治広告は掲載拒否のハードルが通常より高いと主張している。
ソーシャルメディア企業は政治広告の監視役としては非常に不適任だ。米合衆国憲法が言論の自由の制限を禁じているため、政治広告は通常、特に強い法的保護を受ける。選挙資金法をつかさどる米連邦選挙委員会の方が、こうした問題に対処する機関としてふさわしい。監視の権限をフェイスブックなどの企業に与えることで、これら企業が公共政策を巡る言論に及ぼす影響が増している。
しかし明確な政府のルールが存在しないため、ソーシャルメディア企業が各々決断を下す結果、事態は混乱している。ツイッターは最近、国民の利害に関わる人物という理由で投稿は許されるが内容が自社ルールに反する公的な人物の投稿について、警告を表示すると発表した。
ツイッター、フェイスブック、グーグルはいずれも、虚偽の批判を含むトランプ氏の広告を取り下げてほしいとするバイデン前副大統領陣営の要求を退けた。CNNはこの広告の放映を拒否したが、不正確な情報を含む他の広告は放映した。
ソーシャルメディア企業は、自ら判決を下さざるを得ないが、偏りを批判されることはないという居心地の悪い立場に立たされている。保守派は既に、自分たちの声をフェイスブックが抑圧していると不満を訴え、ポリティコによるとザッカーバーグ氏は不満を鎮めるため、FOXニュースの保守派論客タッカー・カールソン氏らと非公式の会談を重ねている。
フェイスブックにとって、ここまで大きな政治的関心を集めるのは割に合わない。州ごとの額を集計すると、7月13日から10月10日までの90日間にフェイスブックが得た政治広告収入は約1億3600万ドル。リフィニティブがまとめたアナリスト推計では、第3・四半期のフェイスブックの広告収入は合計171億ドルで、政治広告はこの1%に満たない。政治広告からきっぱり手を引くのが賢明かもしれない。
●背景となるニュース
*ウォーレン上院議員は、フェイスブックへの虚偽広告の掲載を試みることにより、同社の政治広告方針に疑問を投げ掛けた。議員は12日、「フェイスブックは広告方針を変更し、うそと分かっている広告を政治家が掲載できるようにした。プラットフォームを『利益のための偽情報』マシンに変えるあからさまな措置だ。われわれは今週、どこまでやれるか試してみることにした」とツイートした。
*ウォーレン氏と同じく民主党から大統領選に出馬しているバイデン前副大統領は、虚偽の批判を含むトランプ陣営の広告掲載を取り下げるようフェイスブックに求めて拒否され、同社を批判した。
*フェイスブックはバイデン陣営への書簡で、政治家の広告における主張は直接の発言と見なされるため、事実検証に適さないと主張した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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