コラム:FRB利下げに日欧の援護射撃なし、G7協調の信頼性
Swaha Pattanaik
[ロンドン 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長はこれまで、トランプ大統領から欧州中央銀行(ECB)に比べて行動力が乏しいとの批判を浴び続けてきた。ところが新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受け、そのパウエル氏が主導権を発揮しつつある。惜しむらくは、ECBの援護射撃を得られなかったことだ。
FRBは3日、新型ウイルスが引き起こす経済的リスクを理由に50ベーシスポイントの緊急利下げに踏み切った。数時間前には、先進7カ国(G7)が会合を開き、経済成長確保のために適切な手段を用いると表明していた。FRBは世界の金融市場に対する流動性供給の担い手であるだけに、利下げ効果は米国だけにとどまらず、広く波及するだろう。
ただ10年あまり前なら、G7はもっと大々的に手を打っていた。現在の問題が、金融危機後に世界経済が直面した事態と異なるのは間違いない。当時はG7が協調して資金を市場に注入し、金利を引き下げれば落ち着く性質のものだった。サプライチェーンの寸断や、人々が感染を避けるために家に閉じこもるという事態はまた別の危機で、逆風を和らげるには政府の支出が求められる。だから米国株が緊急利下げを受けいったん上昇したものの、わずか1時間で下げに転じたのもうなずける。さらに日本とユーロ圏は、政策金利が既にマイナス圏にあり、今後大幅な利下げができるかどうかは不透明だ。
とはいえ、形だけでもECBと日銀が協調して動いていれば、G7は必要なら結束して対応するのだとの信頼感を高められたかもしれない。ユーロ圏では、イタリアが新型ウイルスの影響を受ける前の昨年第4・四半期に早くもマイナス成長に陥っており、ECBの追加緩和は歓迎される。新型ウイルスによる経済的打撃が大きい中国と韓国のすぐ隣にある日本も、FRBに追随してもおかしくない。
もちろんECBのラガルド総裁としては、中小企業に的を絞った支援措置を含む政策パッケージをまとめてから行動したいと考えているのかもしれない。また象徴的な利下げでさえ、オーストリア中銀のホルツマン総裁のようなタカ派の理事会メンバーに阻止されそうだという事情もある。ホルツマン氏は3日、利下げを支持しないと明言した。それでもG7の協調姿勢は、口だけでなく実現されてこそ信頼が増すのだ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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