コラム:米ゴールドマンが組織再編、消費者向け強化をアピール
John Foley
[ニューヨーク 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ゴールドマン・サックスが2011年に前回の組織再編をした際、その理念はトレーディングや投資で自分たちのために行う取引と、顧客のために行う取引の間で起きる利益相反の可能性を重要視しないというものだった。その当時に新設された「インベスティング&レンディング」部門が、プライベートエクイティ関連から自己勘定の他のあらゆる取引までを担うことになった。それから10年近くたって、別の組織再編がやってきた。今回は、よりまともな動機を伴っているようだ。
ゴールドマンは6日、新規に立ち上げたばかりの一般消費者向け融資を扱う「消費者・ウェルスマネジメント」部門を新設した。ここには消費者向けオンライン融資事業の「マーカス」や、アップルと共同展開する新クレジットカード事業が含まれる。
この結果、投資家は消費者向け事業について、いくらかの個別の業績データをようやく得られることになる。
ゴールドマンはこの3年間、つまり経営トップがブランクファイン氏からソロモン氏に交代する前から、消費者向け融資事業について意欲を示してきた。
しかし、ここで注意が必要だ。なぜなら事業規模がとても小さいのだ。19年1─9月期のゴールドマンの収入に占める一般消費者向け事業の比率は、わずか2.4%。
収益性もみすぼらしい。新銀行を設立したり、アップルなど強力なパートナーを喜ばせたりするのが高くついていることなどから、昨年1―9月期の一般消費者向け事業の営業経費は、同事業収入の85%に相当した。JPモルガンでは、これが50%程度だ。
一方、頼みにできるのは一般消費者向け事業の成長軌道だ。昨年1─9月期の収入の伸び率は年率50%。特に旧来型の事業に比べ、支店網がいらないという傑出した利点もある。
今後、仮に一般消費者向け事業の収入が過去4四半期の8億2200万ドルから3倍に増え、収入に対する経費の比率が50%に低下し、他の条件は変わらなければ、税引き前利益は10%押し上げられることになる。
自己勘定事業は、資産運用部門に入った。しかし、実際のところ、投資家はゴールドマンがどの部門にどの事業を配置しようが気にしないだろう。むしろ、ソロモン最高経営責任者(CEO)が今月末、初めて投資家たちと向き合う日に、組織改変の目標をどう説明するかに関心があるだろう。
その前に消費者向け事業について少し開示したことは、この事業の収益と同じぐらい小さいことかもしれないが、よいウォーミングアップと言える。
●背景となるニュース
*ゴールドマン・サックスは決算発表方法を変更し、消費者向け事業とウェルスマネジメント事業について、法人顧客向け融資や自己勘定の投資事業から分離する業務見直しを実行に移した。[nL4N29D0LN]
*トレーディング業務を含み、収入が最も多い「インスティテューショナル・クライアント・サービシズ」部門の名称を「グローバル市場」に変えた。
*エクイティインベストメント事業を「インベスティング&レンディング」部門から「資産運用」部門に移し、「インベスティング&レンディング」部門は廃止。企業向け融資は「投資銀行」部門の扱いとなる。
*新たな「消費者・ウェルスマネジメント」部門は、消費者向けオンライン融資事業「マーカス」や、アップルと共同展開するクレジットカード事業を含む。
*ゴールドマンによると、消費者向け事業の2019年1-9月期の収入は6億3600万ドルだった。ゴールドマンが同事業の収入を公表したのは初めて。18年は通年で6億1100万ドルだったと発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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