コラム:ファーウェイ、米市場で勝算なし 撤退が得策

コラム:ファーウェイ、米市場で勝算なし 撤退が得策
1月17日、華為技術(ファーウェイ)を安全保障上の脅威とみなす米国で、連邦議会が同社製品を排除する動きを強めている。2019年1月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)
Gina Chon
[サンフランシスコ 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、米国での通信事業を手放すまいと必死にあがき、無駄な時間を費やしている。米政府・議会から安全保障の脅威と非難される中で、米国内の地方農村部のワイヤレス市場で顧客をつなぎとめるための闘争を続けているのだ。
だが現時点で勝算はなく、逆に単純に米国から手を引くだけで悩みの種を1つ取り除けるだろう。
ファーウェイには、世界的ブランドの地位を守れるだけの理由がある。欧州・中東・アフリカ地域の売上高は、全収入の30%前後を占めており、先月の同社の見積もりでは2019年全体で約1200億ドルに達した。ファーウェイは、次世代通信規格5G技術でも先頭集団に入っている。とはいえ同社は、勝てる戦いを選ばなければならない。
米国の地方農村部からファーウェイの機器を一掃しようという動きは、ファーウェイ製品を他製品に交換させるため地元の40社前後の通信業者に10億ドルを支援する法案が上院で審議されるという形で進んでいる。既に下院では19年12月、同様の法案が全会一致で可決された。与野党の足並みがこれほどきれいにそろうのは異例だ。
その上にトランプ政権は、米企業に対し、ファーウェイなど安全保障の脅威とみなされる企業の通信機器の使用を禁じており、英国をはじめとする同盟諸国に対しても、ファーウェイと取引するなと迫っている。オーストラリアは昨年、これに応じた。
一方、ファーウェイの米国事業は非常に規模が小さい。18年の年次財務報告によると、米州地域の売上高は全収入の7%に届かず、米国はそのまた一部にすぎない。さらに米政府の安全保障面からの締め付けで、事業は縮小の一途をたどっている。
しかし19年12月、ファーウェイは米連邦通信委員会(FCC)を提訴した。米政府機関相手の訴訟は同年で2件目。ファーウェイが米政府へのロビー活動に投じた額も2000万ドル近くと、18年の10倍以上だった。
確かにファーウェイが米国市場から撤退すれば、本当に安全保障の脅威だったと認めることになる可能性がある。ただし米国の政策立案者はもう決断を下したのであり、今年11月の大統領選と議会選で共和党、民主党のどちらが勝利しても状況は変わらない。
対照的に英国では、最大手2社のボーダフォンとBTが、5G通信網整備にファーウェイを参加させるよう英政府に働き掛ける方針だとスカイニュースが伝えた。つまりファーウェイから見て、より希望が持てる事態だ。ファーウェイが米国とすっぱり縁を切れば、同社にとってずっと大事な他の市場に投入できる資源が得られるだろう。
●背景となるニュース
*米上院は、中国の華為技術(ファーウェイ)など安全保障上の脅威とみなされる企業が提供している通信機器を交換するため、地方農村部の通信業者に10億ドルの支援を行う法案を審議している。下院は昨年12月、同様の法案を可決した。
*昨年12月には、ファーウェイが米連邦通信委員会(FCC)を提訴する事態も起きた。米企業が連邦補助金を活用してファーウェイや同じ中国企業の中興通訊(ZTE)から機器を購入するのを禁じたFCCの措置に、異議を唱えた。
*英通信最大手ボーダフォン、BTの2社は、政府に対して英国の5G通信網整備にファーウェイが関与するのを支持するよう働き掛ける方針だ。スカイニュースが17日伝えた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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