コラム:容易でないファーウェイ排除、5G特許が覇権の切り札
Robyn Mak
[香港 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 西側諸国が自国の通信インフラから中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)製品をむしり取るのは容易ではない。ファーウェイは第5世代(5G)移動通信の特許を宝の山のように抱えているからだ。5Gを巡る何らかの世界統一基準が出現するとき、ファーウェイの技術は通信業者にとって必要不可欠になるかもしれないのだ。
ファーウェイは何年も前から移動通信インフラ市場を支配。安価な製品を投入して、競合する北欧のノキアやエリクソンの売り上げを切り崩してきた。しかしファーウェイ製品が中国政府による情報窃取に使われ得るとの米政府の懸念が力を増している。英国政府とフランス政府はいずれも、自国の通信網から同社製品を排除しようとしている。他のあちこちでも同様の対応が広がれば、ファーウェイの通信機器事業には深刻な打撃になるだろう。同事業は昨年、430億ドル(約4兆5000億円)近い売り上げを稼ぎ、会社全体の売上高の約3分の1を占めた。
しかし、アンテナや鉄塔を他社製に建て替えるというのは、問題のごく一面にすぎない。英国のボーダフォンやBTのような通信業者がたとえ既存のファーウェイ機器を全撤去したとしても-英政府はそうした場合も、控えめに見積もって20億ポンド(約2700億円)の費用がかかるとしているが、世界の通信業者は引き続き、次世代通信網を本格展開する上ではファーウェイの技術に依存することになる。ドイツの知財調査会社IPlyticsによると、ファーウェイは最も5G関連の特許を所有しており、そのうち15%が欠かせない特許だという。
簡単に言うとそうした特許は、世界の通信業者が異なる通信網間で相互に機能できるようにするためのいくつもの技術的仕様だ。そこで一つの統一的な基準を打ち立てることは、5Gの要になる。つまり、世界中あちこちの何十億もの機械や自動車やちょっとした機器を継ぎ目なくつなぐことを意味するからだ。
ファーウェイの特許の利益の大半は移動通信基地局関連だ。ノキアやエリクソンが欧州全域でファーウェイの基地局などのインフラを自社製に置き換えたとしても、両社はなおもファーウェイの特許を使い続ける必要があるのだ。
今のところ知財関連の収益はファーウェイ全体にはそれほど貢献していない。同社はむしろ、ライバル社との特許のクロスライセンス契約を好んでいる。
ファーウェイは、自分が締め出された市場でクロスライセンス契約を停止することもできる。そうなれば移動通信各社は特許使用料や手数料を払う羽目になる。これはファーウェイにうまみのあるビジネスになるかもしれない。例えば米クアルコムは重要な移動通信用半導体技術を多く所有しており、2017年以来のライセンス収入は170億ドルを超えている。
ファーウェイは既に今年、米通信ベライゾンを特許侵害で提訴し、10億ドル超の支払いを求めている。ファーウェイが持つ技術的優位も、中国政府の手によって政治的な駆け引きの材料にされるリスクがあるのだ。
●背景となるニュース
*フランス当局はファーウェイから5G関連機器調達を計画している国内の通信業者らに対し、いったん当局認可が切れた後は更新できないと通達した。事実上、ファーウェイの排除措置になる。ロイターが22日、複数の関係筋の話として報じた。
*英国も14日、同国の5G移動通信システムで2027年までにすべてのファーウェイ製品を禁止すると発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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