コラム:ファーウェイ締め出し、米通信機器業界に再編機運も

コラム:ファーウェイ締め出し、米通信機器業界に再編機運も
1月24日、米政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を締め付ける結果、同社をサプライヤーとして取引してきた企業にとっては、真空地帯が生まれるかもしれない。写真はファーウェイのロゴ。ロンドンで28日撮影(2020年 ロイター/Toby Melville)
Jennifer Saba
[ニューヨーク 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を締め付ける結果、同社をサプライヤーとして取引してきた企業にとっては、真空地帯が生まれるかもしれない。米政府はこの機を捉えて、まるで通信機器業界におけるM&A(合併・買収)仲介役になることができるという誘惑に駆られても不思議ではない。
だが、中国企業バッシングの空気が米政府を「その気」にさせようとも、政府が企業同士のマッチングを仕切るというのは、「見栄え」のよい対応とは言えない。
トランプ米政権はファーウェイを市場から完全には締め出していないが、同社が米国の顧客から利益を得るのは難しくなった。一部の例外を除くと、米企業は海外でファーウェイに部品を供給することができず、国内で次世代通信規格5Gのネットワークを構築する際にファーウェイ機器を使うこともできない。
ロイターは24日、米商務省がファーウェイに新たな規制を計画していたが、一部米政府機関の反対で導入を見送ったと報じた。ファーウェイは5G機器の分野で世界屈指のメーカーで、製品価格が比較的安いサプライヤーである以上、これは驚きではない。
こうしたことから、通信機器市場でのファーウェイの優位後退に乗じて、米政府や政府機関が特定企業に、国内の5G向けサプライチェーン強化のための新たな提携模索や、中国系企業が手放さざるを得なくなった技術資産の買収を検討するよう、提案する気になるかもしれない。
戦術的にはある意味、理解できる。ファーウェイをブラックリストに載せたり事業売却を迫ったりすれば、顧客はサプライヤーの選択肢が減ったり、事業の買い手がいなくなったりするリスクがあるからだ。
ファーウェイの退潮傾向が明らかになれば、実際、これを好機とみる企業があるかもしれない。例えばネットワーク機器大手の米シスコ・システムズにとっては、こんな真空状態がフィンランドのノキアのような通信機器メーカーを買収するチャンスになると映るかもしれない。
ノキアの株価は過去1年間で約30%下落し、最近になって配当支払いを停止した。どこかがノキアを買収して売上高の5%相当のコスト削減を実現すれば、ノキアの税引き前利益を12億ドル余り押し上げられる。
スウェーデンの通信機器大手・エリクソンも、同様の戦略的魅力を持っている可能性がある。
しかし、米政府が企業のM&Aを仲介するという考えは、居心地が悪いものがある。政府の計画に沿って対応した企業が、ほかでも有利な扱いを受けるのではないかとの印象をもたらす。そして、ほかの案件で好ましい扱いは受けなかったとしたって、結局のところ、官僚主義的手続きによって、からめ取られてしまうかもしれない。
政府が企業同士を結び付けるというのは、かつての中国政府の手法で、これは競争をゆがめるとの批判につながった。米政府は出しゃばらない方が良い。
●背景となるニュース
*ロイターは24日、関係者の話として、米商務省が華為技術(ファーウェイ)の販売を一段と縮小させる規制を計画していたが、導入を見送ったと報じた。
*米上院は、ファーウェイなど安全保障上の脅威とみなされる企業が提供している通信機器を交換するため、地方農村部の通信業者に10億ドルの支援を行う法案を審議している。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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