コラム:韓国版ニューディール政策への道、コロナ危機で開けるか

コラム:韓国版ニューディール政策への道、コロナ危機で開けるか
文在寅大統領は自ら「韓国版ニューディール政策」と呼ぶ対策の一環として、公的セクターで50万人の雇用を創出する計画だ。写真は総選挙の期日前投票をする文大統領夫妻。4月10日、ソウルで撮影(2020年 聯合ニュース)
Robyn Mak
[香港 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1930年代に米国が大恐慌から抜け出すために選んだ「ニューディール政策」。韓国はいま、その自国版に取りかかろうとしている。
新型コロナウイルス感染流行で経済損失が膨らんだことで、文在寅政権が総額2000億ドル(約21兆5500億円)近い救済策を打ち出した。文在寅大統領は以前から、輸出依存を低減し、雇用と賃金を重視したいと望んでいた。政治的な支援を新たに得られれば、文氏の「所得主導型」成長計画は現実味を増すかもしれない。
最近まで、文氏の左寄りの政策は同国にとって進歩主義的すぎた。韓国を変革するとした同氏の政策には、強力な財閥の力を緩めることや、賃金の引き上げ、福祉支出の増額などが盛り込まれていた。これは伝統的に保守的な産業ロビーたちをいらつかせ、支持を広げることにおおむね失敗してきた。
新型コロナが、こうした構図を変えた。韓国のコロナ対策はこれまでのところ、諸外国のモデルたることが証明されている。新規感染者数が鈍化する中、同国政府が進めるソーシャルディスタンス(社会的距離)の段階的緩和は、封鎖措置の解除圧力にさらされる他国の政府にとっては、先行的な試みとなるだろう。
ただ、韓国はコロナ対策で厳しい措置の導入は回避したものの、消費者心理の悪化による景気の落ち込みは免れない。
23日の発表統計によると、第1・四半期の個人消費は前期比6.4%減と、20年超ぶりの大幅な落ち込みとなった。中国、米国やその他の国・地域向けの輸出が減っていることは、今後の見通しが悪化することも意味する。
キャピタル・エコノミクスのアナリストによると、韓国の第2・四半期の国内総生産(GDP)は前期比6%減少し、2四半期連続のマイナスになる見通し。
景気悪化と闘うため、政府は総額226兆5000億ウォン(1840億ドル)の財政出動計画を打ち出した。オックスフォード・エコノミクスによると、対GDP比では12%近い規模だ。現金支給や企業向け低利融資などは、ほんの手始めかもしれない。
地元報道によると、文氏は自ら「韓国版ニューディール政策」と呼ぶ対策の一環として、公的セクターで50万人の雇用を創出する計画だ。成功すれば内需促進になるだろう。
有権者もこの構想に乗るはずだ。韓国の先週の総選挙で与党「共に民主党」は圧勝し過半数を制した。これで大きな障害が取り除かれる。文氏の5年の任期は2022年まである。同氏には韓国の現代の「変革の奇跡」を促す時間が与えられたのだ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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