コラム:「老け顔写真」アプリはロシア製、個人情報の懸念拡大

コラム:「老け顔写真」アプリが懸念増幅、SNS個人情報問題
ロシア製の顔写真アプリ「FaceApp(フェイスアップ)」を使うと個人情報が悪用されるという懸念が巻き起り、当局が調査に乗り出したが、遅きに失したかもしれない。写真はセキュリティ技術の展示会会場に貼られた顔認証ソフトの広告。2018年10月、中国北京市で撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)
Robert Cyran
[ニューヨーク 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ロシア製の顔写真アプリ「FaceApp(フェイスアップ)」を使うと個人情報が悪用されるという懸念が巻き起り、当局が調査に乗り出した。しかし、ソーシャルメディア(SNS)に「自撮り写真」を投稿する行為は何年も前から盛んで、個人情報に対する懸念はその楽しさに勝てずにいる。当局の対策は遅きに失したと言うべきだ。
米フェイスブックの個人情報が不正に流用されたり、米ヤフーの個人情報が漏えいしたことなどを機に、当局は巨額の制裁金を課すようになった。新たな規制を求める声も強まった。
これに顔写真という要素が加われば、懸念が増幅するであろうことは想像に難くない。ユーザーは嬉々として「自撮り写真」をSNSに投稿するが、いったんクラウド上にアップされてしまえば、個人情報の盗難から、本人そっくりの動画を合成して偽情報をばらまく「ディープフェイク」に至るまで、あらゆる方面で利用される恐れがある。
米民主党のシューマー上院院内総務は当局に対し、フェイスアップを運用するロシア企業がモスクワの政府と情報を共有していないか調査するよう求めた。
おそらく何も不適切な事は行われていないのだろう。同社は米ブログサイトのテッククランチに対し、利用者が同意した画像しか載せていないこと、48時間以内に大半の画像を消すこと、データをロシア政府や第三者に渡していないことなどを説明している。フェイスアップが登場した2017年と同様、今回の騒ぎもすぐに収まりそうだ。
当時は、顔を老けてみせたり、性別を入れ替える機能がユーザーを驚かせた。メディアは肌の色を白くする「ホット」フィルターに注目した。専門家はプライバシー保護への懸念を訴えた。そして、すべてが忘れ去られた。
こうした現象はアップルの故スティーブ・ジョブズ氏がスマートフォンにカメラを載せ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏が人々をソーシャルメディアの世界に引き込んで以来、お馴染みのパターンだ。さらにアプリのダウンロードは拡大し、利用者はより多くの個人情報を共有するようになり、専門家の警鐘は音量が増している。
この循環を断ち切るのに、企業と消費者を当てにすることはできない。企業にとって、データ収集をやめるのは経済的な損失が大きすぎる。長い「同意事項」を読むよう、一般の人に期待するのも非現実的だ
規制当局は、企業の行動を改善させるため本物の鞭を導入する必要がある。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)のようなルールがあれば、消費者は自身のデータをもっと保護しやすくなる。
「おもしろアプリ」を、単に面白かったと片づけられるようにするには、こうした措置が一番有効だろう。
●背景となるニュース
*シューマー米民主党上院院内総務は17日、米連邦捜査局(FBI)と米連邦取引委員会(FTC)に対し、「フェイスアップ」がロシア政府とデータを共有している可能性を調査するよう求めた。ロシア企業ワイヤレス・ラブが作ったこのアプリは、人工知能(AI)を用いて自撮り写真を加工し、老けさせたり異性に変えたりすることが可能。18日時点で、アップルのアプリストア上で最も人気の無料アプリだった。
*米民主党全国委員会は17日、同党の大統領選候補者らに対し、このアプリを使用しないよう注意を呼びかけた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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