コラム:物言う株主エリオット、「夢見る」孫氏の目付役になれるか

コラム:物言う株主エリオット、「夢見る」孫氏の目付役になれるか
 2月6日、エリオットによるソフトバンクグループ出資は、夢見る人(孫正義会長兼社長)とひねくれ者(エリオットを率いるポール・シンガー氏)の対決の幕開けといえるかもしない。写真は記者会見に臨む孫氏。2018年11月、東京で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Richard Beales
[ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アクティビスト(物言う株主)といえば、かなり頑固で妥協しない人々と相場が決まっている。だとすれば、報道されているようにエリオット・マネジメントがソフトバンクグループ(ソフトバンクG)<9984.Tの株式約30億ドル相当を取得したのは、ソフトバンクGの方向性を巡る夢見る人(孫正義会長兼社長)とひねくれ者(エリオットを率いるポール・シンガー氏)の対決の幕開けといえるかもしない。
エリオットが、非常に過小評価されているソフトバンクGを批判するのは理にかなっている。多大な債務や、共有オフィスのウィーワークなどへの大胆な(あるいは無謀とも言える)投資、影響力が孫氏1人に集中する体制といった要素を持つソフトバンクGは、企業価値を高める起爆剤になろうと考える投資家にとって格好の標的だ。Breakingviewsは昨年12月、時価総額が900億ドルなのに対して、個別資産を合計すれば当時で2000億ドル超の価値を持つ可能性があるソフトバンクGが、エリオットのようなアクティビストから興味を持たれるだろうと「予言」していた。
ソフトバンクGの資産価値の大部分は、中国電子商取引大手アリババや、携帯電話子会社ソフトバンク<9434.T>などの上場企業株がもたらしている。一方で、ソフトバンクG本体と傘下のビジョン・ファンドがウィーワークや配車サービスのウーバー・テクノロジーズ、インドのホテル運営企業オヨなどに対して行った投資は、当初考えられていたほど賢明な措置ではなかったとみなされ、ソフトバンクGの企業価値全体が損なわれている。ソフトバンクGが経営権を持つ米携帯電話大手スプリントと、同業TモバイルUSの合併を巡る再交渉も、リスクの1つだ。
エリオットの要求項目に、ソフトバンクGとビジョン・ファンドの意思決定プロセスの改善が入っているのはもっともだ。外部出身者を増やして取締役会をより多様化するなど、ガバナンスの強化を図れば、投資家の信頼度は高まる。ほとんどのアクティビストが持ち出す自社株買いも話し合われているが、たとえ追加の借り入れではなく資産売却で資金をねん出するとしても、ソフトバンクGの場合は他の問題の方が大きいために、テーマとしては脇役にすぎない。
エリオットは簡単には手を引かない。だからこそ、ソフトバンクGに圧力をかけることができる数少ないアクティビストの1つとなる。孫氏がソフトバンクGの株式22%を握っている以上、同氏のコントロールを覆すのは難しい。半面、孫氏はエリオットが掲げる目標の一部は共有するかもしれない。同氏がソフトバンクGは過小評価されていると考えているのは間違いない。また、投資先のハイテク企業がいかなる犠牲を払っても成長しさえすればいいわけではなく、利益を求める必要があるということに遅まきながら気が付いているからだ。
そうならばエリオットが外部から監視するのは、孫氏を脱線させないようにするという意味でまさにプラスだ。しかし孫氏は、規律や手元資金の確保よりも、ビジョンや直感に頼りがちな人物。つまりエリオットの介入は、孫氏の楽観主義をどの程度抑えられるかの試金石と言える。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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