コラム:ツイッターに課金制観測、低い「サブスク」との親和性
Jennifer Saba and Gina Chon
[ニューヨーク/サンフランシスコ 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 企業と投資家の一部がサブスクリプション(有料定期購読)型サービスにご執心だ。この数日、ツイッターとウォルマートがサブスク型サービスの導入検討を単にほのめかしたただけで、時価総額がそれぞれ一気に膨らんだのは、こうした一端に過ぎない。実際のところ、顧客から毎月定額の料金が入る一部企業は業績が好調だ。しかし、サブスク型サービス導入で最終的にコストを負担する可能性があるのは、顧客だけではない。
ツイッターは自社用求人サイトの募集情報で、サブスク型サービスのプラットフォーム構築の計画が明らかになった。その後に掲載内容が手直しされたため、計画の詳細は謎のままだ。だが、時価総額260億ドル(約2兆8000億円)のツイッターは8日に株価が11%余り上昇した。
一方、ネットメディアのリコードによると、時価総額3600億ドルのウォルマートは、アマゾン・ドット・コムの有料会員向け「プライム」のようなサブスク型サービスを計画している。この報道を受けて7日のウォルマート時価総額は230億ドル増加し、ライバルのアルバートソンズの3倍になった。
安定的な収入は、ツイッターの業績を支えるだろう。同社は憎悪をあおるコンテンツへの懸念から、一部の広告主によってボイコットされている。食品・家庭用品大手、ユニリーバは、ツイッターとフェイスブックへの広告掲載を年内停止する計画だ。
ソーシャルメディア企業は、新型コロナウイルス感染流行でユーザー数の伸びが加速した。その中で、ツイッターの第1・四半期の売上高の伸びは年率3%にとどまっていた。ウォルマートの売上高は2-4月期に8.6%と大幅に伸びたが、サブスク型導入に伴って無料の当日配送サービスなどを追加すれば売上高はさらに増えるだろう。
こうした企業が、サブスク型サービスの流れに乗りたいと思うかもしれない理由を理解するのは難しくない。ニューヨーク・タイムズ、スポティファイ・テクノロジー、ネットフリックスなど、こうしたサービスを導入しているメディア企業3社の株価は、いずれもこの半年でS&P総合500種指数<.SPX>の伸びを上回っている。ウォルマートとツイッターに対しても同様だ。
しかし、あるところでうまく行ったことが、よそでもそうだとは限らない。ツイッターのドーシー最高経営責任者(CEO)にとって、サブスク型サービスはそもそも、広告主の反発を引き起こしたコンテンツ問題とあまり関係ない。伝統的なメディアと違ってフィルターなしにすぐに載ることで価値があるコンテンツに対して、ユーザーに料金を払わせるのは難しいだろう。
少なくとも収入が増えるという意味でウォルマートの方が、サブスク型サービスは意味がある。ただ、アマゾンのようになるのにはマイナス面もあるかもしれない。2-4月期の営業利益率はウォルマートが5%だったが、アマゾンの北米事業では2.8%だった。出荷の費用負担が大きかったのが一因だ。サブスク型サービスはそれ自体にコストを伴う。負担するのは購入者だけにとどまらない。
●背景となるニュース
*ツイッターがサブスクリプション型サービスのプラットフォーム構築を計画していることが、同社ウェブサイトの求人情報で明らかになった。新サービスのコードネームは「グリフォン」と表示されていた。その後、掲載内容は手直しされ、当該部分は削除された。ツイッターの株価は8日、11%余り急伸した。
*米ネットメディアのリコードは複数の消息筋の話として、ウォルマートが今月中に、アマゾン・ドット・コムの有料会員サービス「プライム」のようなサブスク型サービスを開始すると報じた。新サービスの名称は「ウォルマート+(プラス)」。年会費は98ドルで、食料品の当日配送などのサービスが受けられる特典がある。ウォルマート株価は7日に7%上昇した。[nL4N2EF076]
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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