コラム:大きすぎてつぶせない、タカタの「五里霧中」
Quentin Webb
[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 自動車部品大手タカタ<7312.T>の将来について言える最善のことは、すべてが流動的ということだ。
タカタは27日、米連邦地裁の審理で欠陥エアバッグ問題について有罪を認め、裁判所は10億ドルを支払う和解案を承認した。
これで新たな投資家やスポンサーを確保する道は開かれたが、答えの出ていない疑問はあふれている。
同社は1月、欠陥エアバッグ問題に関する刑事責任を認め、10億ドルを支払うことで米司法省と合意した。
支払額の内訳は罰金が2500万ドル、被害者補償基金への拠出金(将来的な事故含む)が1億2500万ドル、リコール(回収・無償修理)で損失を被った自動車メーカーへの賠償額が8億5000万ドル。
こうした和解は、タカタが「大きすぎてつぶせない」ことを意味している。
米連邦地裁判事は今回の和解承認に当たり、タカタに対してより厳しい判断を示すことも検討したが、同社が破綻する恐れがあり、そうなればエアバッグのリコールが遅れかねないため和解案を承認したと説明した。
エアバッグの生産が少数の企業に集中し、破綻すれば自動車業界全体の生産に影響が及びかねないこともある。
タカタは今後、中国の寧波均勝電子<600699.SS>傘下の米自動車部品メーカー、キー・セイフティー・システムズ(KSS)から早期に支援を得られるかもしれない。
日本にとって自動車産業は誇りであり、数年前なら中国企業との提携は考えられないことだった。
ただ、危機は変化を媒介する。タカタが自動車メーカーではなく部品メーカーで、問題の発生源である一方、KSSそのものが米国企業であることも助けになるだろう。
それ以外はすべてが見通せない。外部委員会はKSSを推薦しているが、取締役会はまだ決定していない。
スポンサー決定に日米の裁判所が関わる「法的整理」が含まれる可能性は十分にあるが、そうでないかもしれない。
スポンサーがタカタにどの程度投資するか、いつ、どのように資金が注入されるか、企業買収ファンドなどの金融パートナーの参加があるかなども不透明だ。
過半数株式を保有する創業家の影響が薄れることは確実。だが、タカタの時価総額は依然として4億ドルを超えている。
従って、株主は引き続き、すべてが無に帰すよりは、希薄化による大規模な損害は被ったとしても、少しでも損を回収したいと願っているはずだ。
何が起ころうと、タカタにとって顧客を維持し、取り戻すのは大変なチャレンジとなるだろう。
米当局との和解の成立にしても、タカタにとって法的訴訟からの解放は意味しない。米国その他の国での民事訴訟は高額の支払いに発展する可能性がある。
だれが次にハンドルを握るにせよ、注意深い運転が必要だ。
●背景となるニュース
・タカタは27日、デトロイトの連邦裁判所で開かれた審理で、欠陥エアバッグ問題について有罪を認めた。裁判所は10億ドルを支払う和解案を承認。今後はタカタの投資家やスポンサーの支援確保に向けた動きが本格化する見込み。
・同社は昨年2月、外部の有識者からなる委員会を発足させ、再建計画の策定を依頼。同委員会はスポンサー企業としてKSSを推薦し、大口債権者である自動車メーカーも交えて再建に向けて協議中。ただ、最終決定には至っていない。同委員会は昨年、米M&A助言会社ラザードをフィナンシャル・アドバイザー(FA)に起用した。
・日本のメディアでは、自動車メーカー側が日米での裁判所が関わる「法的整理」を条件にKSSを支持する意向と報じられている。
・28日の東京株式市場のタカタ株は0.18%安の552円で引けた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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