コラム:TikTokにあってファーウェイにないもの
Gina Chon
[サンフランシスコ 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の動画投稿アプリ「TikTok」と同国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]は、共通の問題を抱えている。中国政府とのつながりを懸念する米議会から攻撃を受けているのだ。
TikTokは米国内で味方が少ないかもしれないが、TikTokを運営する北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)にはTikTokを売却・スピンオフ(分離・独立)するという選択肢がある。だが、ファーウェイは長期的に抜き差しならない状況に追い込まれているようだ。
両社は勝ち目のない戦いを強いられている。TikTokの朱駿・最高経営責任者(CEO)はニューヨーク・タイムズ紙に対し、中国政府からユーザー情報の提供を求められても断ると発言。ファーウェイの創業者で人民解放軍出身の任正非CEOも、中国政府による米国でのスパイ活動を支援することはないと主張している。
だが、そうした主張を証明するのは難しいし、中国政府がいずれにせよ何らかの方策を見出すという懸念を抑えるのも難しい。このため、米国の議員はTikTokを利用する若者の親にTikTokを削除するよう呼びかけ、米政府も他国にファーウェイ製品を利用しないよう訴えている。
ファーウェイは少なくとも米国に強力な味方がいる。クアルコムやインテルなどの米半導体大手から商品を購入しているためだ。依然として米政府の輸出規制の対象になっているが、米商務省は18日、一部の米国企業がファーウェイとの取引を続けることを認めた。ファーウェイを巡る問題が、米中貿易合意に盛り込まれる可能性もある。
だが逃げ道を見つけるいう点では、TikTokのほうが勝算が高いとみられる。TikTokのスピンオフや売却が可能だからだ。TikTokの月間アクティブユーザーは約15億人。親会社のバイトダンスは2017年に米動画アプリ「Musical.ly」(ミュージカリー)を買収したが、買収価格はユーザー1人当たり900万ドルだった。これをTikTokに当てはめると、TikTokの企業価値は135億ドルとなり、楽に株式上場ができる。米国のデータは米国内に保存しており、TikTokを分離しても失うものはそう多くない。
ファーウェイのほうは「脱中国化」がはるかに難しい。昨年の売上高は1050億ドルで事業内容は複雑だ。米国では来年の選挙を控えて、人気の高いTikTokがやり玉に挙げられているが、ファーウェイに対する国家安全保障上の懸念と5G市場の競争相手としての懸念は超党派的なもので、トランプ政権が幕を閉じても消えそうにない。
バイトダンスにとって、TikTokの売却やスピンオフは苦しい決断となるだろう。だが少なくともバイトダンスには、TikTokが集中砲火を浴びた場合の選択肢がある。針のむしろから逃れるのは、ファーウェイのほうが難しい。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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