コラム:米銀の改革奏功、二番底織り込んでも健全性なお合格

コラム:米銀の改革奏功、二番底織り込んでも健全性なお合格
 6月25日、米銀大手各行は今年のストレステスト(健全性審査)でかなりの健闘を見せた。写真は2013年10月、ニューヨークのウォール街で撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)
Gina Chon
[サンフランシスコ 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米銀大手各行は今年のストレステスト(健全性審査)でかなりの健闘を見せた。だがテストを行った連邦準備理事会(FRB)にも、合格点が付けられる。新型コロナウイルス感染のパンデミック(大流行)に起因するかつてない試練を受けてもなお、米国の金融システムは総じてしっかりしている様子が示され、10年にわたる改革が、いく世代かぶりの大危機さえ乗り切れる業界の土台を生み出すことに成功したことが分かる。
FRBの見立てでは、新型コロナの感染第2波による景気の二番底を織り込んだ「W字型」の景気回復でも、大手33行の普通株等ティア1最低比率は7.7%を確保する。許容できるぎりぎりのラインとみなされる4.5%よりも高い数字だ。しかもこれは、FRBが普段のテストに用いる「深刻な逆境」シナリオよりも状況が悪化するとの想定に基づいている。
JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)が自慢するような「鉄壁のバランスシート」を全ての銀行が持っているわけではない。いくつかの無名の米銀は、普通株等ティア1比率が4.5%を割り込んだ。そしてFRBはそこまでやるかと思えるほどに、第3・四半期末まいくで自社株買いを禁止するとともに、配当支払いも現状を超えないように制限しようとしている。これらの措置は延長の可能性もある。ただ大手行は既に自社株買いを自粛しており、銀行株投資家が得るさまざまなメリットの中で今や配当が占める割合は小さい。
銀行は、ストレスを乗り切れるというお墨付きをもらったことについて、2008年の金融危機後に実施された数々の改革に感謝してもおかしくない。規制当局は自己資本や流動性、レバレッジの標準的な要件を設けただけでなく、各行に「保守的なバッファー」まで積むことを迫った。システム上重要な最大手8行は、そうした要求をさらに上回るバッファーと損失吸収能力を備えている。この8行は、将来の経済ショックに備えた「ストレス資本バッファー」を通じた追加的な資本要件も今後達成しなければならない。同要件は今年8月に公表され、10月から適用される予定だ。
こうした金融規制のうち比較的守るのが簡単な部分でも、過去の危機の再発を確実に防ぐ意味がある。一方厳しい部分は、何の予告もなく、前例もない問題が銀行セクターに及ぼす悪影響を和らげることを目的としている。新型コロナ大流行が再燃してW字型の景気回復見通しさえ楽観的に見えるような猛威を再び振るうのかどうかは、見当がつかない。しかし差し当たっては、FRBの大手行に対する「指導」が実を結んでいることを今回のテスト結果は物語っている。
●背景となるニュース
*FRBは25日、想定したさまざまな危機への米銀の対応能力を調べる今年のストレステスト(健全性審査)について、大手33行が合格したと発表した。ただ少なくとも9月末まで、配当支払いを制限する方針も示した。
*FRBの従来の「深刻な逆境」シナリオでは、米失業率が6.5%ポイント上がって10%になると想定されている。その上で新型コロナウイルスの影響を考慮して、パンデミック後の景気回復を3つのシナリオに分類して徹底的に分析、そのうちの1つでは失業率は19.5%に達すると仮定された。
*大手行の普通株等ティア1最低比率は、景気回復が「V字型」なら9.5%、より緩やかな「U字型」なら8.1%、感染第2波による二番底を織り込んだ「W字型」で7.7%になるという。
*各行は、第3・四半期の配当を前期の水準、および過去12カ月の平均利益より高額にすることはできない。
*第3・四半期の自社株買いも禁止された。ただJPモルガンやバンク・オブ・アメリカなど多くの大手行は既に、少なくとも6月末まで自社株買いを停止するとしている。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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