コラム:米のコロナ対策がカオスの様相、各州ばらばらで経済衰弱
Gina Chon
[サンフランシスコ 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 混沌とする米国の新型コロナウイルス感染防止策が、企業活動の逆風となっている。トランプ大統領が流行を軽視する発言を繰り返し、対応は出足からつまずいた。23日の発表によると1日当たり感染者数は3万5000人を超えて4月半ばの水準に戻り、欧州連合(EU)は米国からの渡航禁止措置を検討している。
州政府は連邦政府にリーダーシップを期待するものだが、トランプ政権はそうした役目から距離を取っている。それどころかトランプ氏は新型コロナ感染者数が増えているアリゾナ州とオクラホマ州で大規模な選挙集会を開き、この数日で2度も政府の感染防止ガイドラインを無視した。
そのため市民の健康を守る仕事はほぼ地方自治体任せとなり、感染防止策にばらつきが生じている。対応が政治的な色彩を帯びているため、なおさらだ。ギャラップとナイト・ファウンデーションが最近実施した世論調査によると、自宅以外の場所でマスクを着用する民主党員の数は共和党員のほぼ2倍だった。公の場でのマスク着用を義務付けている州は30%に過ぎない。一方、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカットの3州は24日、新型コロナウイルスの感染率が高い州から訪れる人に14日間の自主隔離を義務付けると共同で発表した。
米国では5月の経済再開以来、約半数の州で感染者数が急増したが、これはマスク着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)など感染防止のガイドラインが守られていないのが一因だ。23日にはテキサス州で1日当たり感染者数が5000人を超えて過去最多となり、フロリダ州も1日の感染者数が5500人を上回った。しかし両州の知事は公の場でのマスク着用の義務化に反対しており、フロリダ州のデサンティス知事は、人は強制されると、かえって従いたくなくなるものだ、との見方を示した。
しかし、もし知事らが感染拡大を押さえ込めなければ、企業活動は再び停止に追い込まれるかもしれない。先にテキサス州のアボット知事は市民に自宅にとどまるよう要請。アリゾナ州は感染者数が5月半ばから5倍に増え、ロックダウン(都市封鎖)の再導入を求める声が高まっている。カリフォルニアのようにマスク着用が義務化されている州でも感染者数が急増し、感染阻止が危うくなっている。
政治家は既に新型コロナ危機による経済的打撃という痛みに直面している。フロリダ州の5月の失業率は14.5%で、テキサス州でも13%に達した。エピク・グローバルによると、5月の連邦破産法11条適用申請件数は前年同月からほぼ50%増加した。感染の波に繰り返し襲われればロックダウン再導入の可能性が高まり、米経済はさらに衰弱しかねない。
●背景となるニュース
*ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカットの3州は24日、新型コロナウイルスの感染率が高い州から訪れる人に14日間の自主隔離を義務付けると発表した。
*国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は23日の議会証言で、複数の地域で感染が急増しており、これは市民がソーシャルディスタンスやマスク着用などのガイドラインを守っていないのが一因だと述べた。
*ジョンズ・ホプキンズ大が公表した24日時点のデータによると、米国では過去2週間に約半数の州で新型コロナの感染者数が増えた。このうちアリゾナとオクラホマの2州では、それぞれ23日と20日にトランプ大統領が大規模な選挙集会を開いた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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