コラム:変わる米大統領選、経済は決め手にならず

コラム:変わる米大統領選、経済は決め手にならず
 米大統領選は経済情勢に左右される傾向にあるが、2020年秋の選挙に向けた構図は様相を異にしつつある。写真は遊説先のペンシルバニア州で演説するトランプ大統領。12月10日撮影(2019年 ロイター/Tom Brenner)
Gina Chon
[サンフランシスコ 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米大統領選は2つの要因に左右される傾向がある。都市の近郊に暮らす有権者の動向と、経済情勢だ。しかし、2020年の大統領選に向けた構図は様相を異にしつつある。近郊の穏健な有権者が、トランプ政権下で享受する低失業率にとどまらない、もっとほかのテーマで動くかもしれないのだ。  
近郊の有権者は16年の大統領選でトランプ氏の勝利を後押しした。彼らの多くは08年と12年にはオバマ氏に投票したが、16年にヒラリー・クリントン氏が民主党の指名候補に選ばれると共和党支持に転じた。
経済面を考えれば、20年の選挙で彼らが投票先を変えることはない。なにしろ米国は今年7月に景気拡大局面が過去最長を更新。失業率は3.5%と50年ぶりの低水準にとどまる。
しかし、現職大統領の支持率が46%しかない今回、そうした常識は通用しないかもしれない。昨年の中間選挙や今年の地方選の結果を手掛かりにするならば、国民は安定的な経済成長を当たり前のものと考え、投票所では他の問題を判断材料にしている可能性がある。地方選ではヘルスケアや銃規制、教育などが民主党候補の勝利を支えた。
例えばケンタッキー州には伝統的に共和党が強い地域がいくつかあるが、その1つのキャンベル郡は今年10月の失業率が3%と低水準だった。しかし、11月の州知事選では民主党候補がトランプ氏の支持する候補を破った。争点は教育政策だった。
昨年の中間選挙でも、郊外の有権者が経済的な要因を無視しているような結果が増えた。かつて共和党の牙城だったカリフォルニア州オレンジ郡では、民主党が共和党から4議席を奪ったが、同郡の同年10月の失業率は2.5%。人種構成の多様化が進む中道右派の地域では、トランプ氏の極端な政策が共和党敗北の原因とされている。
こうなると、民主党の指名候補に誰が選ばれるかが大統領選に大きく影響する。世論調査は、バイデン前副大統領のような穏健派ほうがウォーレン上院議員のような改革主義者よりもトランプ氏と渡り合える可能性を示している。
トランプ氏弾劾に向けた取り組みは、政策課題に焦点を当ててほしいと考える郊外の有権者からは反発を受ける可能性もある。
トランプ大統領の就任以降に失業率が5.6%から3.7%に下がったミシガン州マコーム郡のような地域でも、来年の大統領選は接戦の様相だ。マコーム郡ではオバマ氏が2度支持され、次はトランプ氏が支持された。昨年は民主党の州知事が選出された。知事選で争点になったのは、ヘルスケア費用や劣化した道路の整備だった。
共和党の父ブッシュ大統領に挑んだビル・クリントン氏は当時、「肝心なのは経済だ。愚か者め、それが分からないか(it’s the economy, stupid)」と口にした。
来年の大統領選では、このセオリーが「愚か」に見えるかもしれない。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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