コラム:ウォーレン氏の巨大IT解体案、トランプ陣営が横取りも
Jennifer Saba and Gina Chon
[ニューヨーク/サンフランシスコ 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 2020年米大統領選の野党・民主党候補指名を目指すエリザベス・ウォーレン上院議員は、大手IT企業の解体を政策案の目玉に掲げている。だが再選を狙うトランプ大統領の陣営が、横取りする可能性がある。
民主党と与党・共和党の意見が一致する分野は数少ないが、米ハイテク企業が肥大化し過ぎていると考えているという点は、まさにその1つだ。ウォーレン氏はアマゾン・ドット・コムを幾つかの事業に切り分けたい意向で、ジェフ・ベゾス氏が率いる同社がマーケットプレースを運営しながら自社製品をそこで販売するのは許されないと主張している。
ウォーレン氏はフェイスブック(FB)上に、わざとうその政治広告も掲載した。「ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)がトランプ氏の再選を支持している」との内容で、目的はFBに政治広告の事実チェックがあると証明することだった。与党側でもホーリー上院議員がプライバシー保護のための「トラッキング拒否法案」など、ソーシャルメディアを規制する立法措置を提起し、民主党が後押ししている。
しかしトランプ政権こそが、いの一番に動く公算が大きい。既にトランプ氏自身のツイッターを通じた発言などでその地ならしを始めつつある。11月にはトランプ氏がアルファベット子会社グーグルの政治広告ターゲット制限厳格化について、投票行動を抑圧していると非難するメッセージを発信した。
米司法省の独占禁止当局は7月に、有力プラットフォーマーの規模が技術革新を妨げ、競争を低下させていないかどうか調査に乗り出した。名指しはしていないものの、バー司法長官の標的がアマゾンやアルファベット、FBであるのは間違いない。
バー氏は夏場に反トラスト法に関する自身の顧問も指名した。これは異例の対応で、なぜなら司法省はマカン・デラヒム氏が統括する反トラスト局という専門部署を持っているからだ。もっともバー氏は以前ずっと大手IT企業を競争上の懸念から調査することに懐疑的だったが、1年前に態度を変えている。
またバー氏は、トランプ氏の「忠実な兵士」という側面も持つ。2016年米大統領選に対するロシア介入疑惑とこれにトランプ陣営が関与した可能性を捜査していたモラー特別検察官には常に批判的であり、トランプ氏の要求に従って捜査着手の経緯について独自の調査を実施した。
こうした状況から、通常は党派性が乏しい司法省が政治力学や誰かの信念によって、FB、グーグル、アマゾンなどの解体を目指そうとする流れが読み取れる。その取り組みは法廷に持ち込まれ、恐らく何年も続く。ただひとまず、トランプ政権が世間の注目を民主党から自分たちに転換させ、トランプ氏の弾劾訴追を巡る問題から目をそらすことさえできるのではないか。これらは大手IT解体を真っ先に言い出すのに十分な理由といえる。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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