コラム:米金融業界、「ウォーレン財務長官」より心配すべきこと
Gina Chon
[サンフランシスコ 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ウォール街は、エリザベス・ウォーレン上院議員が財務長官に就く可能性に頭を痛めているはずだ。米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利した場合、リベラル派のウォーレン氏が財務長官に起用される可能性がある。銀行幹部らは、規制を強化しそうなウォーレン氏を悪く言うのが好きだ。しかし金融業界が本当に懸念すべきは、より直接的に監督に携わる財務省下部機関にウォーレン氏が及ぼす影響かもしれない。
バイデン政権になった場合、ウォーレン氏はどの役職に就くにせよ大きな影響力を持つだろう。バイデン氏は政策課題についてウォーレン氏の意見を仰いでおり、両者は定期的に接触している。同氏が財務長官になれば、史上初の女性財務長官の誕生だ。
たとえ入閣しなくても、ウォーレン氏は存在感を発揮するだろう。同氏は側近を主要ポストに就けることにより、自身の政策的主張を広めることに成功してきた。例えば銀行・経済政策に関する同氏の首席弁護士だったバーラット・ラマムルティ氏は現在、新型コロナウイルス関連の景気刺激基金を監視する議会委員会のメンバーだ。別の側近、ジュリー・シーゲル氏はバイデン氏の政権移行チームに属する。
バイデン政権では、こうした顔ぶれの一部が金融規制当局のトップに就く可能性がある。トランプ政権下で牙を抜かれた米消費者金融保護局(CFPB)などは、ウォーレン氏による大改革の機が熟している。CFPBは2008年の世界金融危機を受けてウォーレン氏が考案した機関だ。
新人下院議員のケイティ・ポーター氏は、ハーバード大ロースクールで教授だったウォーレン氏の教えを受けた人物で、既に金融機関幹部やCFPBのキャシー・クラニンガー局長など規制責任者への厳しい追及で知られている。消費者を代表する活動をしていた経緯もあるため、CFPB幹部には適任だ。側近のシーゲル氏も元CFPBメンバーという経歴を持つ。
ウォーレン氏は、規制当局による法執行の甘さも厳しく追及してきた。証券取引委員会(SEC)については、司法省の訴追案件で銀行が有罪を認めた場合でさえ、銀行に一部活動の継続を認めると批判。17年にはラマムルティ氏をSEC委員に推した経緯があり、バイデン政権になれば再び推薦するかもしれない。
ウォーレン氏はまた、連邦準備理事会(FRB)と通貨監督庁(OCC)に対し、大手銀ウェルズ・ファーゴによる不正口座の不祥事にもっと厳しく対処するよう迫った。ウォーレン氏が財務長官に就くことは、実はウォール街にとって最も小さい心配事かもしれない。それより重要なのは、複数の金融規制機関に彼女の考え方が行き渡る可能性の方だ。
●背景となるニュース
*報道によると、米大統領選の民主党候補指名争いから離脱したウォーレン上院議員は、11月の大統領選でバイデン前副大統領が勝利した場合の財務長官候補の1人となっている。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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