コラム:中国が米半導体の輸入増へ、国内産業育成の難航浮き彫り
Christopher Beddor
[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - お金では買えないものもある。報道によると、中国は米国からの半導体輸入を増やすと提案した。これは国内で最先端の半導体を製造する構想が試練にさらされていることの証左だ。
国内生産を増やす「中国製造2025」といった産業政策は海外の怒りを買ったが、最先端半導体の大量生産に手こずっているところを見ると、こうした政策が機能するのかどうかさえ疑わしい。
14日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、中国は米国側の交渉担当者をなだめるため、米国からの半導体輸入を6年間で2000億ドルに拡大することを提案した。2017年に約60億ドルだった輸入額を、数年中に年平均330億ドルに増やす計算だ。一部は最終加工工場を第3国から中国に移すことで実現しそうだが、実際の購入額を増やす必要もあるだろう。
これは国内で最先端半導体の生産を増やすという中国の政策と相反する。確かに同国は大量の半導体を生産している。デロイトによると、2017年の生産は800億ドル相当だ。しかし最先端技術については完全に海外サプライヤーに依存し続けているのが実情。アナリストの推計によると、中国はメモリーチップ分野で米国に5年間遅れており、一部のプロセス技術など他の主要分野では15年間も後れをとっている。国が支援する製造企業SMICは、世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)<2330.TW>との技術格差を埋められずにいる。
明るい面もある。例えば華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]子会社のハイシリコンは印象的な携帯電話用チップを設計しているし、業界関係者の多くは、数十年後には中国も追いつくと考えている。しかしそれは、消費者用電子製品への巨大な国内需要に負うところが大きい。これまでの状況を見る限り、人材や知的財産といったソフト要因は、お金と同じくらい重要だ。米中協議は現在、市場を歪ませる中国の補助金を巡って対立しているが、半導体の問題は補助金政策がいかに失敗に終わるかを思い起こさせる。
●背景となるニュース
・ロイターが15日、関係筋の話として報じたところでは、中国は米国との通商協議で、国内産業への補助金制度をやめ、同制度をすべて世界貿易機関(WTO)規則に準拠させると約束した。
・ただ米当局者らは、中国が補助金制度の詳細を開示していないことなどから、約束の実行に懐疑的な見方を示しているという。
・WSJが14日報じたところでは、中国政府はこれとは別に、米国からの半導体輸入を6年間で2000億ドルに拡大することを提案した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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