コラム:苦戦のファーウェイ、英国が差し伸べた救いの手
Robyn Mak
[香港 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英紙フィナンシャル・タイムズによると、英国の国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)はこのほど、中国の華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]製品を次世代通信規格「5G」に採用した場合のリスクは抑制できると結論付けた。
英国が欧州の通信機器市場でファーウェイに救いの手を差し伸べた形だ。ファーウェイ排除を唱える米政府に対して主要国が反旗を翻したのは初めてだが、今後もこうした動きは続くかもしれない。
NCSCの判断は、異種混合の欧州市場とファーウェイの関係の複雑さを浮き彫りにした。ロイターの昨年12月の報道によると、ファーウェイがこれまでに獲得した5G関連の受注契約22件の半数以上を欧州が占める。英国は2010年から、ファーウェイ製品を使った場合のセキュリティー面の危険性について調査してきた。今回NCSCがリスクは抑制可能と判断したことで、ファーウェイはBTグループやボーダフォンなど英通信大手にとって有力なサプライヤーになることができる。ファーウェイによると、過去5年間に英国の投資と調達につぎ込んだ資金は計13億ポンド(16億5000万ドル)に上るという。
ただ、こうした経営戦略の前に米国の「ファーウェイ叩き」が立ちふさがった。米政府はファーウェイがサイバー諜報活動に関与していると主張、対イラン制裁への違反や技術搾取の容疑でファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO)を逮捕した。オーストラリアとニュージーランドは既に5Gネットワーク構築からファーウェイを締め出し、ポンペオ米国務長官はファーウェイ製品を使う国との同盟関係の維持は困難だと警告した。
ただ、実際に欧州全土からファーウェイ製品を駆逐するのは難しいだろう。第1に、欧州の通信大手は既存のG4機器でファーウェイ製品の導入比率が既に40%に達している。これらのファーウェイ製機器をノキア製やエリクソン製に切り替えるのは技術的な困難を伴い、コストもかさむ。また、英国の当局者が指摘しているように、ファーウェイ製品経由で実際に情報が漏えいした証拠は見つかっておらず、全面的な締め出しは正当化が難しい。英政府は米国やカナダなどと諜報機関の情報共有などを定めた協定を結んでおり、国内における米国の諜報活動を認めている。一方で、ドイツとフランスの政府にはファーウェイ製品のリスクへの対処方法のひな形を提供している。他の国が英国に追随すれば、欧州の5G市場で覇権を狙うというファーウェイの野心は頓挫せずに済む。
●背景となるニュース
・英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は、5Gにファーウェイ製品を利用した場合のリスクは抑制可能だと最終判断した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が17日、関係筋の話として伝えた。
・FTが関係筋の話として報じたところによると、英デジタル・文化・メディア・スポーツ省は国内の通信インフラに関する調査報告を公表する見通し。報告には、ファーウェイ製品を5Gネットワークに利用した場合の情報漏えいリスクへの対処方法などが盛り込まれるという。
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