コラム:欧米との「アンカップリング」図る中国人民銀行
Pete Sweeney
[香港 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国人民銀行(中央銀行)は金利政策で意識的に欧米との「アンカップリング」(脱同調化)を図っているようだ。各国中銀が利下げに踏み切るなか、人民銀行は主要金利を据え置いている。
不良債権の増加や資本逃避の可能性を踏まえると、大規模な財政・金融政策は、2009年との比較でリスクが大きい。このため、中国はあまり伝統的とはいえないルートで景気の刺激を迫られている。これは微妙な舵取りを要求される。
多くのエコノミストは、人民銀行の動きの鈍さに驚きの声をあげている。米連邦準備理事会(FRB)はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0-0.25%に引き下げ、他の中銀も追随利下げに踏み切っている。
ところが、人民銀行は金融政策の方針を何一つ調整していない。銀行の貸出金利の指標となる1年物の最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)は4.05%に据え置き、1年物の中期貸出制度(MLF)金利も3.15%に据え置いた。
中国と米国の10年物国債の利回りスプレッドは2%ポイント近くと、2015年以来の高水準に達している。
人民銀行が重視しているのは流動性サイドだ。銀行の預金準備率を下げ、超短期の借り入れコストを引き下げている。
短期金融市場の指標金利である7日物レポレートは1.9%と、1月中旬の2.7%から低下している。ただ、問題は与信コストではなく、投資意欲の低迷だ。需要は国内では低迷しており、海外では急減している。大量の資金がドルに向かうリスクがある。
関係筋がロイターに明らかにしたところによると、中国は国内総生産(GDP)の約3%に相当する2兆8000億元(約4000億ドル)規模のインフラ対策を計画している。
だが、あまり大きな期待は持てない。利回りが高いプロジェクトの大半は、世界的な金融危機の際の建設ブームですでに実行に移されている。
不要な橋でも建設すれば、ホテル・飲食店・輸出産業で解雇された人を一時的に雇用できるが、債務返済に苦しむ地方政府がさらなる債務の拡大に見舞われることになる。
財政面の選択肢としては、減税や個人に直接現金を支給する案も考えられるが、やはり財政が一段と圧迫される。
政府は国有企業も活用しており、取引先への信用供与や貧困層向けの公共料金免除を指示している。
他の国もそうだが、中国当局もバランスシートの負債を増やす以外、選択肢は乏しい。だが、中国はバランスシートへのダメージを最小限に抑えようとしている。
国内需要が急速に回復すれば、中国は賢明だったということになるだろうが、急ピッチな回復が実現しなければ、保守的な対応を後悔することになるかもしれない。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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