コラム:中国の「富裕化・肥満化・老化」で稼ぐ世界的製薬企業
Robert Cyran
[ニューヨーク 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - お金持ちになるのは嬉しいが、肥満と老化は避けたいものだ。しかし世界的な製薬企業にとっては3つそろうのが好ましく、急速に人口動態が変化する中国で順調に売り上げを伸ばしている。例えば米メルクは第3・四半期の中国での売上高が前年同期比84%も伸びた。3つの要因に加え、製薬企業におおむね好意的な中国政府の政策方針も追い風となっており、少なくとも中国国内のライバル企業が台頭してくるまでこの潮流は続きそうだ。
米アムジェンが10月31日、中国のバイオテクノロジー企業、百済神州(ベイジーン)<6160.HK>の株式を27億ドルで取得すると発表したことは、中国市場における商機の大きさを浮き彫りにした。百済神州はアムジェンのバイオ医薬品を中国で商品化する。英アストラゼネカの中国の売上高は40%増えた。ファイザーの新薬もほぼ同程度、売り上げを伸ばしている。スイスのノバルティスは2023年までに中国で50種類の新薬を認可申請する計画だ。
しかも現在、中国市場の拡大は著しい。調査会社IQVIAによると、昨年の医薬品販売高は1370億ドルで、米国に次ぎ世界第2位の市場だ。メルクの売上高の7%、アストラゼネカの20%を占めている。
人口動態でビジネスのすべてが決まるわけではないが、製薬業界にとって好影響はある。中国は急速に裕福になり、高齢化も進んでいる。2002年には65歳以上の人口が全体の7%にとどまっていたが、世界銀行の推計では2050年には26%を占める見通しだ。中国人は健康状態も悪化している。米医学雑誌アナルズ・オブ・インターナル・メディシンの調査によると、過去10年間で肥満の人の比率は3倍の14%に高まった。この結果、循環器系の疾患や糖尿病、がんの患者が増えた。
中国政府はグローバルな製薬企業に概して好意的だ。デロイトによると、多国籍企業が昨年得た新薬の認可は40件と、2016年の3件から増えた。これは売り上げ増につながる。
一部には陰りもある。中国の消費者は伝統的に国内製のジェネリック医薬品を敬遠してきたが、国内製品の質向上に向けた取り締まりなどにより、一部グローバル企業の古い医薬品の利益率は圧縮された。仏サノフィは心臓疾患治療に使われる「プラビックス」と高血圧症薬「アプロベル」の売上高が来年50%減少する可能性があるとしている。とはいえ、より高価な処方薬は堅調だ。
中国は科学者を多数輩出しており、規制によって国内企業の研究・開発支出を後押ししている。国内の巨大製薬企業が確固とした地位を築くには長年を要しそうだ。しかし主要産業で国内企業を育成してきた中国政府の実績を考えれば、グローバル企業は今のうちにわが世の春をおう歌するべきだろう。
●背景となるニュース
*アムジェンは10月31日、中国のバイオテクノロジー企業、百済神州(ベイジーン)の株式20.5%を27億ドルで取得し、中国での事業を拡大すると発表した。
*百済神州はアムジェンの抗がん剤3種類を中国で商品化することで合意した。アムジェンの抗がん剤開発にも協力する。
*サノフィは10月31日、中国での売上高が前年同期比14%増えたと発表した。医薬品とワクチンがけん引役となった。メルクは同29日、中国での売上高が前年同期比84%増加したと発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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