コラム:中国外食産業、新型コロナ問題で買収ファンド受け入れも

コラム:中国外食産業、新型コロナ問題で買収ファンド受け入れも
2月17日、中国の外食産業にとっては、買収ファンドが救世主になる可能性がある。写真は14日、成都のKFC店舗で、店の外で注文した品ーの準備ができるのを待つ顧客。提供写真(2020年 ロイター/cnsphoto)
Alec Macfarlane
[香港 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の外食産業にとっては、買収ファンドが救世主になる可能性がある。マクドナルドや、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)を運営するヤム・チャイナ、火鍋チェーンの海底撈<6862.HK>は、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大に伴って中国の全店舗を一時閉鎖した。今まで中国の飲食店とプライベートエクイティ(PE)会社はお互いを警戒し合っていたが、この新型コロナウイルス問題を契機に状況が変わるかもしれない。
ヤム・チャイナは、春節(旧正月)以降で中国本土に展開する飲食店およそ9000の3割余りを休業し、営業を続けている店舗の既存店売上高は40-50%減少している。マクドナルドは中国の数百店を一時閉鎖し、海底撈や大手中華料理の九毛九<9922.HK>は、本土の全店舗の営業を取りやめた。
チャイナ・ルネッサンスのアナリストチームによると、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際にも、消費関連セクターで痛手が最も大きかったのは、飲食・宿泊業だった。だが中国経済全体が減速している今回、事態がもっと悪くなってもおかしくない。人気の飲食チェーン、西貝を経営するJia Guolong氏が地元メディアに示した見積もりでは、中国で飲食業に従事する人々は3000万―4000万人に達する。
ヤム・チャイナの場合、潤沢な手元資金を保有し借金がほとんどないため、苦境を乗り切れるはずだ。しかしバランスシートがずっと脆弱な中小の飲食チェーンは、西貝を含めて数知れない。Jia氏は、現在の資金の回転率ではわずか3カ月操業できるだけの手元資金しかないと認めている。
当然のように銀行は彼らへの融資には慎重になっている以上、価値が割安化した企業を物色する買収ファンドは、Jia氏のような創業者が資金受け入れにより前向きになっていると気づくのではないか。特に海外展開を熱望する創業者なら、なおさらだ。中国の外食産業は旧弊だとの固定概念が付きまとうものの、実際には多くが洗練され、ハイテク技術を巧みに利用して営業する形に進化し、中国の消費者が大きな懸念を持つ透明性と食の安全という分野に大規模な投資をしている。そうした流れに乗れてこなかった向きも、今回、外部の支援を活用できるかもしれない。
ただしユーロモニターのデータで19年の売上高が7170億ドルに上った中国の外食産業は、引き続き生き馬の目を抜くような世界だ。競争はし烈で、賃金と食品のコストは上がっている。だから英投資会社CVCが14年、四川料理チェーン運営会社の買収で散々な目にあってその難しさを学んだように、中国飲食関連企業の実態を把握し、財務状態を監査するのは一筋縄ではいかないだろう。
一方、こうした企業の多くの所有者は経営権を手放したくないので、これまでPE会社と関係を持つことに消極的だった。それでもSARS終息後の経験に基づいて判断するなら、新型コロナウイルスの感染がいったん抑制されれば消費は急速に持ち直す可能性がある。懐に余裕がある投資家なら、足元は中国外食産業の獲物を狙うチャンスなのかもしれない。
●背景となるニュース
*米ファストフード大手マクドナルドは、中国に展開する約3300店のうち数百店を一時閉鎖した。また中国の人気火鍋チェーンの海底撈は、国内の店舗営業を当面停止すると発表した。
*米コーヒーチェーン大手スターバックスは、中国国内のおよそ4300店の半分強を閉鎖するとともに、予定していた最新の2020年業績見通し公表を延期した。家具販売のイケアは中国の全店舗を、バーガーキングは一部店舗の営業をそれぞれ取りやめた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.