コラム:ファーウェイが突き当たった中国的「透明性」の限界

Christopher Beddor
[香港 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国的な手法で透明性を訴えようとする通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)のやり方は限界に達した。
次々と難問に直面する創業者の任正非(レン・ツェンフェイ)最高経営責任者(CEO)は15日、異例のメディア取材に応じ、中国政府と距離を置こうと試みた。しかし、中国の複合企業・海航集団(HNAグループ)が思い知らされたように、無実をアピールする伝統的なやり方は、中国の注目度が高い企業にはもはや効果がない。
通信各社が次世代高速通信「5G」ネットワークの構築に取り組む中、先進諸国はファーウェイの機器に対して安全保障上の懸念を強めている。取材の中で任CEOは、中国政府から一切出資を受けておらず、不適切な情報を提供するよう要請されたこともないと語った。「1セントたりとも(資金を)受けていない」と、任氏は強調した。
また、米アップルの創業者、故スティーブ・ジョブス氏を引き合いに出し、個人所有のファーウェイ株1.14%の比率を引き下げる可能性も示唆した。
外国企業がここまでタイムリーに「保証」を差し出せば、政府の警戒というものは一般的に和らぐものだ。だが、ファーウェイの対応はそもそも遅きに失している。
1月16日、中国的な手法で透明性を訴えようとする通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)のやり方は限界に達した。カナダ・オタワにある華為の研究所で2018年12月撮影(2019年 ロイター/Chris Wattie)
海外企業を次々と買収し、西側諸国の銀行や規制当局から調べられたHNAが、資本構造を明らかにした2017年の異例の決定を想起させる。HNAもまた、中国政府との関係について疑惑の目を向けられていた。
いったん恐怖が根を張ってしまえば、どの企業もそれを鎮めるのは難しい。ファーウェイにとってより深い問題は、同社に向けられた疑惑が今では根が深くなり過ぎ、通常の戦術でできることがほとんどなくなっていることだ。
同社に対する米政府の反感は、10年近くかけて着実に高まっていった。米国側の「不安」は、戦略的な信頼や法の支配、中国政府と中国テクノロジー大手の関係といった、根本的な問題に起因している。
会社側が革新的な透明性の確保に全力を挙げたとしても、いずれ中国の情報機関が機微な情報の収集や提供を要請してくるかもしれない、という西側政府の懸念を完全に払しょくすることはできないだろう。
中国製テクノロジーの拡散を、いかに西側諸国が安全に受け入れていくのか。その基準を作る新たな解決策が必要になっている。それは企業の幹部ではなく、政治家の仕事になるだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.