アングル:ファーウェイが中国ハイテク企業に投資、供給網補強

アングル:ファーウェイが中国ハイテク企業に投資、米制裁で供給網補強
 9月29日、米政府の制裁を受けて供給網の補強を進めている中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が、半導体メーカーなど国内のハイテク企業への出資を強化している。写真は同社のロゴマーク。2019年7月撮影(2020年 ロイター/Aly Song/File Photo)
[上海 29日 ロイター] - 米政府の制裁を受けてサプライチェーン(供給網)の補強を進めている中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が、半導体メーカーなど国内のハイテク企業への出資を強化している。
公開データによると、同社が2019年4月に設立した哈勃科技投資は、昨年8月以降、中国のハイテク企業に17件の出資を行った。
ファーウェイの郭平(グオ・ピン)輪番会長は先週、同社の供給網が米国の「攻撃」にさらされていると批判。「ファーウェイは1企業に過ぎないため、投資と技術を活用して、供給網に参加する提携先の成長を支援する」と述べた。
中国政府も、国内半導体産業の育成に力を入れているが、米国・韓国・台湾の大手半導体メーカーには、まだ追いついていない状況だ。
<半導体分野に照準>
アナリストは、ファーウェイによる投資について、将来的には同社の事業に寄与する可能性があるが、現時点では制裁に伴う供給網の欠損に対応できていないと指摘。かつて急成長していたスマートフォン事業の土台が揺らいでおり、最終的には主力のネットワーク機器事業にも影響が及ぶリスクがあるとの見方を示している。
中国の半導体業界のある投資家は「長い時間がかかるだろう。だが、選択肢は少なく、外部への投資に頼らざるを得ない」と述べた。
ファーウェイは、哈勃の事業についてコメントを控えている。
哈勃の出資先は、大半が半導体分野の国内ベンチャー企業。ファーウェイの供給網に参加している企業はごくわずかだ。
ファーウェイが今年出資した縱慧芯光は2015年の創業。カメラの顔認識術をサポートする垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)センサーを製造している。
縱慧芯光のコメントは取れていないが、同社に出資する投資家によると、縱慧芯光のセンサーは、ファーウェイの多数のスマートフォンに利用されている。
だが、ファーウェイが出資する企業の多くは、まだ事業を開始したばかりの「アーリー・ステージ」の段階にある。
調査会社イコールオーシャンで中国半導体産業を担当するイバン・プラトノフ氏は「出資先の大半はニッチな中小企業だ。得意分野は持っているが、必ずしも国際競争力はない」と述べた。
例えば、哈勃が1月に出資したショルダー・エレクトロニクスは、無線通信用の高周波(RF)フィルターを製造しているが、まだ最先端の第5世代(5G)対応スマートフォンとの互換性を実現できていない。
ショルダー・エレクトロニクスのコメントは取れていない。
また、哈勃が今年出資した3ピークは、無線基地局で利用されるアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)を製造しているが、この市場は米国勢が圧倒的なシェアを握る。
3ピークが上海証券取引所の「科創板(スター・マーケット)」上場に先立ち公表した目論見書によると、昨年の売上高はわずか3億元(4399万ドル)。同社のコメントは取れていない。
哈勃が出資しているのは、ファーウェイの主力事業である通信機器分野だけではない。半導体、原材料、バッテリー技術分野の企業にも複数件の投資を行っており、自動運転車の分野を視野に入れていることがうかがえる。
哈勃は先月下旬には、深センを拠点とする企業オープン・ソース・チャイナにも出資。同社は、米国のソフトウエア開発プラットフォーム「GitHub」に対抗する「Gitee」を運営している。Giteeのコメントはとれていない。
提出文書によると、哈勃は通常、投資先企業の株式の5-10%を取得。出資額は公表されていない。
<投資ペースを加速>
こうした最近の投資からは、ファーウェイが投資の頻度を増やし、投資先を海外から国内に戻していることがわかる。
例えば、ファーウェイは2013年にベルギーを拠点とする光工学(フォトニクス)分野のCalopiaを買収。翌年にはインターネット・オブ・シングス(IoT)分野の英半導体メーカー、Neulも買収した。
ファーウェイの買収先の選定に関与した元社員は「ファーウェイは、研究開発を社内で行いたいという意向が強い。このため、出資や買収は、あくまで最終手段だった。欧米のハイテク企業に投資する傾向が強かったのはこのためだ」と説明した。
(Josh Horwitz記者)
*見出しの脱字を補い再送しました。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab