コラム:中国自動車メーカー、SUV「切り札」にインド進出へ

コラム:中国自動車メーカー、SUV「切り札」にインド進出へ
2月11日、中国の自動車メーカーは、新たな成長を求めて西へと向かっている。写真はムンバイで1月撮影(2020年 ロイター/Francis Mascarenhas)
Katrina Hamlin
[香港 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の自動車メーカーは、新たな成長を求めて西へと向かっている。国内の販売不振を受けて、中国自動車大手の長城汽車<601633.SS>は10億ドルを投じてインド市場に参入し、現地生産に乗り出す計画を発表。他社も追随するだろう。  
フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA) など欧米の自動車大手はインドでの事業展開にブレーキをかけ、この数カ月で撤退の動きも見られる。しかし、インドの消費者は小型で手頃な価格の車種には飽き足らなくなっており、中国メーカーは競合するインドのメーカーを追い越すことになるだろう。
インドでは昨年、保険制度や排ガス基準の改定を背景に乗用車の販売が大幅に落ち込んだ。しかし、2018年の自動車保有台数は人口1000人当たりわずか20台前後で、長期的な成長の可能性は極めて大きい。数百社がしのぎを削る中国市場と異なり、インドは最大手のマルチ・スズキが単独で乗用車市場で約半分のシェアを握り、他社が食い込む余地がありそうだ。
長城汽車や上海汽車(SAIC)<600104.SS>、第一汽車集団(FAW)<000800.SZ>など中国勢が今月、インドのグレーターノイダで開かれた自動車ショー「オート・エキスポ」に参加したのはこのためだ。長城汽車は1月、インドから撤退する米GMから現地の工場を買い取ることで合意した。
中国の自動車メーカーは、インドで成功を収めそうだ。中国勢は、スポーツタイプ多目的車(SUV)の製造に長けているためだ。インド国内では小型セダンからの買い替え対象としてSUVの魅力が増しているが、インドの国内勢売れ筋は依然として小型セダン。中国では社内スペースの大きいSUVの人気が高く、中国勢はその製造に長けている。
インド自動車工業会(SIAM)の統計によると、昨年は乗用車の販売が大きく落ち込んだにもかかわらず、SUVの販売は5%増えた。西側メーカーもSUV市場で勝者になることを夢見ているが、中国勢は価格の安い車を作ることが可能で、そうした経営戦略を取る方針でもあり、こうした点が新たに進出するインド市場で勢いを得るのに役立つだろう。
インドのモディ首相がクリーンな自動車の普及を進めていることも、中国勢にとって追い風になりそうだ。中国政府は排ガス問題への取り組みとして電気自動車やハイブリッド車の開発を加速している。インド国民がこうした新技術に飛びつけば、中国勢はタタ・モーターズなどインド勢との競争で有利な立場に立つだろう。西方に旅する価値はありそうだ。
●背景となるニュース
*中国自動車大手の長城汽車は5日、インドで生産施設や研究開発に10億ドルを投資すると発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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