焦点:中国の米農畜産物輸入、合意達成には「爆発的」加速必要

焦点:中国の米農畜産物輸入、合意達成には「爆発的」加速必要
 中国が米国から365億ドル相当の農畜産物を輸入するという目標で、今年分の達成は、不可能とは言わないまでも、残された数カ月間に輸入を「爆発的に」増やさなければ到達できないかもしれない。写真は米インディアナ州ローチデールで収穫される大豆。2019年11月撮影(2020年 ロイター/Bryan Woolston)
[北京/シカゴ 30日 ロイター] - 中国が米国から365億ドル相当の農畜産物を輸入するという目標で、今年分の達成は、不可能とは言わないまでも、残された数カ月間に輸入を「爆発的に」増やさなければ到達できないかもしれない。
米中は今年1月、2年に及ぶ激しい貿易交渉の末に、中国が米国産農畜産物の輸入を大幅拡大する「第1段階合意」にこぎ着けた。
しかし、最新データである5月末までの同輸入実績は60億ドルと、前年同期からは9.1%しか増えておらず、17年水準に対しては31%も下回る。合意では17年を50%上回るのが求められているにもかかわらずだ。中国の主な輸入農産物である大豆では増加し始めたものの、目標達成には「激増」させる必要がある。
米中関係の急速な悪化、11月に控える米大統領選、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行、さらには中国が実際どれだけの大豆を必要としているのかという疑問を考えあわせると、あまりにも遠い目標かもしれない、というのが関係者らの見方だ。
米中が約束した輸入額は、過去最高だった13年の290億ドルを25%も上回る水準で、アナリストらからは当初から達成が疑問視されていた。
とはいえ、中国側は今年トウモロコシや食肉で過去最大の輸入契約を米国側と結ぶなど、幅広い農産物の購入を強化したため、一部では楽観的な見方もある。
シカゴのアグリソース社のダン・バス社長は「点数を今つけるなら、当初のCマイナスからBに引き上げる。この状態が続けば、さらに上のレベルに上がるかもしれない。ただ、継続が必要だ」と語った。
<大豆に注目>
目標達成の可否はあと2、3カ月ほどのうちにはっきりするだろう。例年、中国による米農畜産物輸入の約半分を占める大豆は、ブラジル生産者からの供給が途絶える10─12月に大半の購入が実施される傾向があるからだ。
今年の中国による米国産大豆の輸入は立ち上がりが遅かったが、過去8週間では25億ドル以上の発注があった。
しかし中国の大豆加工業者は今年、ブラジルから過去最大量の大豆を購入しているため、年末までの5カ月間に米国産への需要が続くかどうかは不明だ。
中国では伝染病で大量の豚が死亡し、飼料としての大豆需要が減っている。こうした状況から立ち直れるかどうかも需要を左右する。
大豆は輸入目標365億ドルの半分を占めているため、ロイターの計算によると、輸入業者は7月から12月にかけての季節には月額約28億ドル分を購入する必要がある。
しかし、この規模の購入が2カ月よりも長く続いた前例はない。
輸入目標は金額ベースで設定されているため、新型コロナ危機の影響による大豆価格の下落も目標達成を難しくする。
<その他の輸入>
大豆以外の農畜産物は、年初来の輸入ペースを維持するのが困難かもしれない。
中国の輸入業者は今年、既にトウモロコシの輸入枠をほぼ満たしたと考えられている。しかも9月には国内産トウモロコシの収穫が始まる。
米農務省のデータによると、1─5月の中国による米国産食肉輸入は豚肉12億ドル超を含め、過去最大を記録した。しかし農畜産物輸入全体に占める食肉の割合は比較的小さい。
ロイターの計算では、中国が下半期に約250億ドル分もの米農畜産物を購入しなければ、全体の目標は達成できない。
<政治的配慮>
中国は目標を達成できなくても、新型コロナの影響が理由であれば合意違反には当たらないかもしれない。合意は「自然災害その他の予見不可能な事由」が起こった場合には柔軟な対応を認めることになっている。
政治的な配慮も関係してくるだろう。
米中関係が悪化する中、中国は選挙戦のさなかのトランプ米大統領から、むざむざこれ以上激しい攻撃の標的になるのを避けたいかもしれない。中国の最終的な大豆輸入量は、中国政府が大豆の政府在庫の補充に動くという手を選ぶか否かに左右される可能性が高い。
中国側の消息筋は、中国としてはできるだけ国際的な公約違反のそしりを免れたいだろうと解説。ある中国国営企業の幹部は「われわれは歯を食いしばって合意を実行する。さもなければ国際的にも良い印象を与えない」としながらも、そのためには「爆発的に」買う必要がありそうだと話した。
(Hallie Gu記者、Karl Plume記者)

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