コラム:成長鈍化の中国、大規模経済対策の発動の是非
Christopher Beddor
[香港 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は、大規模な経済対策を引き続き温存するのが最も望ましい。第2・四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年比6.2%と、前期の6.4%から鈍化した。今月中に開催が見込まれる共産党中央政治局会議は、それに対して政府が何らかの対応を示すことを認めるだろう。しかし、中国経済は減速中であって急降下しているわけではない以上、景気対策はまだ使わずに残しておくのが一番の選択肢ではないか。
6.2%という成長率は過去27年で最低の伸びだったが、楽観すべき理由はそれなりにある。同じく15日に発表された1─6月固定資産投資や、6月の鉱工業生産、小売売上高はいずれもロイターがまとめた市場予想を超えた。もっともその前までは弱い指標が相次いだ。輸入と輸出はともに前年を下回り、国家統計局の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、2カ月連続で製造業活動が縮小していることを示す水準となった。
そこで問題になるのが、今はさらなる景気対策の発動を促すほどの状況なのかどうかだ。しばしば四半期GDP公表後に開かれ、当局の方針を定める役割を果たす共産党中央政治局会議でも、そうした疑問が提起されるだろう。
例えば昨年秋の同会議では、政策方針を記した文書から「デレバレッジ(債務圧縮)」や不動産価格の規制に向けた断固たる決意に関する言及が削除され、経済の先行きに不安を抱いた当局が金融リスクの抑制姿勢を弱め、経済成長の後押しに軸足を移したことをうかがわせた。
ただ今年第1・四半期の成長率が堅調になると、金融リスクを警戒する表現は復活し、マクロ・プルーデンス政策的な規制を再び重視する姿勢が垣間見えた。
今回、政策担当者には大きな政策転換を避ける賢明さがあるだろう。経済指標の数字はさえず、経済成長の減速は明白とはいえ、依然として今年の政府目標である6─6.5%の範囲にとどまっている。
さらに今後、米中貿易協議が決裂して米政府が新たに約3000億ドル相当の中国製品を対象とする関税を導入してくるという事態には非常に現実味があり、そうなった場合こそ追加経済対策が必要になるのはほぼ間違いない。
中国は既に前倒しで財政出動に踏み切り、第2弾も打ち出されつつある。このためINGの見通しでは、インフラ関連プロジェクトが2兆元(約2910億ドル)から4兆元に倍増するのに伴って、年後半は強い資金需要が出てくる。
政策担当者にとっては、行動すべき時期とじっくりと静観すべき時期があり、15日発表されたGDPを含む一連のデータは、動かない方が妥当だと告げている。
●背景となるニュース
・中国国家統計局が15日発表した第2・四半期国内総生産(GDP)は、前年比6.2%増と第1・四半期実績の6.4%増から鈍化し、過去27年間で最低の伸びを記録した。ロイターがまとめたアナリスト予想も6.2%増だった。
・筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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