コラム:来年は中国株から資金逃避か、貿易戦争とESGブームで
Jeffrey Goldfarb
[香港 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米中貿易戦争が、金融面にも広がりを見せている。米証券取引所での中国株上場を廃止すべきだとの議論があるほか、米議会では政府年金による中国株の購入を阻止する法案が提出された。人権や監査の問題、中国株の乱高下を巡っても懸念は増幅している。こうした潮流は、折から米国で盛り上がる環境・社会・企業投資(ESG)投資ブームと合流して、2020年に何らかの資本逃避を引き起こしそうだ。
米国では反中国ムードに拍車が掛かっている。党派的な激しい対立がよく起きる米議会でも、香港の民主化デモ参加者や、新疆ウイグル自治区で拘束されるイスラム教徒住民への支持では一致し、公式に支持を表明して中国政府をいらだたせた。こうした圧力は資産運用と投資の世界にも波及しつつある。
報道によると、トランプ政権は今年の早い段階で、米国の主要取引所から中国企業を締め出す方法を検討していた。9月時点で米国に上場している中国企業は172社、時価総額は1兆ドルを超え、その約半分を電子商取引大手アリババが占めている。議会の委員会も、中国政府が米監査機関による中国企業の会計監査を認めない限り、中国企業が米国で資金調達することを禁じるなどの規制を提言した。
ルビオ上院議員(共和党)はこの提言と呼応する法案を提出したほか、連邦政府の年金基金による中国株への投資を禁止する措置を推進している。6000億ドル規模の年金運用の監督を担うある米政府機関が、中国株を7.5%組み入れているMSCI総合世界市場株価指数に投資を連動させると決めたのが引き金になった。
大理石の採掘を手がける香港の赤字企業、アートゴー・ホールディングス(雅高)<3313.HK>の一件も、中国株のリスクを思い知らせた。香港に上場する同社の株価は3800%も上がり、11月に上昇率が世界一となってMSCI中国株指数に組み入れられる見通しだった。ところが、MSCIが決定を覆した翌日に株価は98%下落し、時価総額60億ドル近くが吹き飛んだ。
仮に中国株への投資が公式に禁止されなかったとしても、中国への反感の高まりと群集心理は公的、民間を問わず年金基金の間に容易に根を下ろすだろう。投資家はESG問題にも大きな注意を払うようになっている。2020年はこうした要因が重なり、中国株は大きな代償を払わされそうだ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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