コラム:米上院「対中制裁法案」で団結、一段と高まる危機

コラム:米上院「対中制裁法案」で団結、一段と高まる危機
5月26日、米上院による中国への圧力が新たな水準に達している。写真は2019年9月、香港大のデモ現場で、米国旗を手にするデモ参加者(2020年 ロイター/Jorge Silva)
Gina Chon
[サンフランシスコ 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米上院による中国への圧力が新たな水準に達している。26日に広まった超党派法案は、中国が香港に対する新たな制限を導入すれば中国の政府当局者や銀行に制裁を科す内容となっている。両国間の緊張は既に高まっており、同法案は緊張をさらに数段階引き上げることになりそうだ。
中国に対する怒りは、通常分裂している米議会を団結させている。上院の法案は香港国家安全法の施行に責任を持つ個人の米国における不動産資産を凍結するものとなっている。過去の法案と異なり、当局者と大きなビジネスを手掛ける中国の銀行も対象とし、米国の銀行との取引を断ち、米ドル取引へのアクセスを制限する。共同起草者であるクリス・バン・ホーレン議員(民主党)は26日、中国共産党の「痛いところ」を突くのが狙いだと説明した。
トランプ大統領はこれまではこうした制裁に乗り気ではなかった。これは中国との通商合意を台無しにしたくなかったためだ。昨年11月には香港における人権侵害の責任を負う中国当局者に制裁を科す法案にしぶしぶ署名したものの、その権限を行使したことはまだない。
ただ、新型コロナウイルス流行が状況を一変させた。トランプ大統領は武漢のコロナ流行への中国政府の対応に怒り、「第1段階通商合意」を再考している。
中国政府にとって制裁はレッドライン(越えてはならない一線)だ。これを越えれば米国企業に対する報復的関税を上回る復讐の可能性が高まる。米金融機関への市場開放措置は覆される可能性がある。例えば、JPモルガンが影響を受けそうだ。JPモルガンは4月、外資制限が撤廃されたことを受け、中国の資産管理合弁会社の完全子会社化を目指すと表明。同国では証券事業も築いている。
中国はさらに、アップルやボーイング、クアルコムといった米国企業を「信頼性のないエンティティ―リスト」に盛り込むとの脅しを実行する可能性もある。そうなれば各社の事業は制限を受け、ボイコット運動にさらされる可能性もある。
つまり、制裁が発動されれば一定の関係が一緒に断ち切られる可能性があるということだ。関税引き上げの応酬で企業や消費者が受けるコスト増よりも大きな経済・政治的な影響が出てくるだろう。しかし、そうした影響を受け入れる姿勢を米国の政策当局者は強めているようだ。
●背景となるニュース
*クリス・バン・ホーレン米上院議員は26日、中国が香港に国家安全法を導入した場合に中国に新たな制裁を科す自身の法案について、中国共産党の「痛いところ」に打撃を加えるだろうと指摘。法案は香港の自由を制限するルールの導入に責任を負う個人だけでなく、こうした個人とビジネスを手掛ける中国国内の銀行も対象に。共同起草者はパット・トゥーミー上院議員(共和党)。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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