コラム:中国ZTE巡る米中の駆け引き、最大の敗者は

Pete Sweeney
[ワシントン 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領にとって、それが自分のためになるのであれば、中国の経済統制は好ましい存在と言える。
中国政府が中興通訊(ZTE)<000063.SZ><0763.HK>の経営陣を刷新すれば、トランプ氏は米企業によるZTEへの製品等の販売を禁じた措置を解除し、ZTEを消滅から救うことを検討中だ。
中国政府は国内企業に米国製品の輸入を増やすよう命じ、米クアルコムによるNXPセミコンダクターズ取得など重要な買収案件を承認する可能性もある。
ただこうした米中の駆け引きが続く中で、今のところは市場原理が最大の敗者となっている。
中国では経済的な判断や資産の価格設定に対する政府の介入が大きいとして、欧米は世界貿易機関(WTO)が中国を市場経済と認定することに反対してきた。そのため、中国が国内企業に購入する製品や購入元を指図することで問題の解決を図る方向へと、トランプ氏と中国の習近平国家主席が傾いているのは何とも皮肉な話だ。
中国は製造業が海外での価格競争を勝ち抜くために国有銀行が実行している低利融資をやめさせる代わりに、3750億ドルの対米貿易赤字を減らす方法を見つけるよう関係当局に指示するだろう。この目標達成には国内企業に米国からの購入を増やすよう命じる以外にない。
つまり、自由市場経済の盟主であるはずの米国が、事実上の輸入割当を巡って共産主義を掲げる役人と交渉する構図が浮かび上がる。
こうした事態に陥ったのは選択肢の少なさ故かもしれない。
禁輸措置を採ればZTEは経営が立ち行かなくなり、米国の製品供給業者はいかなる経済的補償もなく一方的打撃を受ける。中国政府は米企業に対する報復措置に動くだろうし、北朝鮮との交渉にも支障が生じるだろう。中国は鉄鋼などの製品の過剰な輸出で政府が責任を負っており、最も適切に需給の均衡を図れるのも政府だという意見は一理ある。
しかし長期的にみれば、貿易を管理して見返りに企業買収案件を承認するようなやり方は、既に問題を抱えている米中の経済関係を一層不安定にする。
ZTEのケースで明らかなように、両国経済は深く結びついており、関係の解消は困難だ。しかし今のままでは政治家は常に土壇場で大豆の購入を白紙撤回したり、企業買収の承認を拒否することができる。何らかの製品について受注が増えれば米産業界の一角は一時的な満足を得るかもしれないが、それは中国を市場経済に導く取り組みというより大きな犠牲を伴っている。
●背景となるニュース
・複数の関係者筋は22日、米企業による中興通訊(ZTE)への部品やソフトウエアの供給禁止措置の解除に向けて米中が合意に近づいていると述べた。一方、中国は同日、自動車の輸入関税の税率を25%から15%に引き下げると発表した。
・米商務省は4月、北朝鮮とイランに対する禁輸措置にZTEが違反したとして、米国企業が同社に部品などを輸出することを禁じる制裁を発動していた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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