焦点:人民元の基準値算出を巡る霧晴れず、市場は困惑

焦点:人民元の基準値算出を巡る霧晴れず、市場は困惑
 8月18日、中国人民銀行(中央銀行)が人民元基準値の算出方法見直しについて追加的な説明を行ってから1週間が経過したが、アナリストにとって新たな算出方法の仕組みの理解を進めてくれる材料は何も出てきていない。写真は人民元紙幣。5月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)
[上海 18日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)が人民元基準値の算出方法見直しについて追加的な説明を行ってから1週間が経過した。しかしアナリストにとって新たな算出方法の仕組みの理解を進めてくれる材料は何も出てきていない。
人民銀は5月下旬、人民元基準値の算出に「カウンターシクリカル(反景気循環)な要素」を導入すると発表。制度の透明性を高めると同時にマーケット志向を強め、ルールに基づいた仕組みにすると説明した。しかし実際には、その後人民元基準値は予想が難しくなった。
人民元の対ドル相場は昨年6.5%ほど下落。今年は4%と緩やかな上昇だが、そのほとんどは基準値の算出方法見直し後に起きた。
OCBC銀行(シンガポール)のエコノミスト、トミー・シエ氏は「基準値の予測は困難になってしまった」と話す。シエ氏の予想モデルはこの3カ月間で精度が下がり、「困惑している」という。
算出方法の見直し発表後に沈黙を守っていた人民銀行は、11日公表の四半期金融政策報告で見直しについてより具体的な説明を試みた。それによると、公認銀行14行が「経済の基礎的諸条件や外為市場の動きに基づき」それぞれ独自にカウンターシクリカル係数を作成。人民銀行が14行の算出した予測値を集計し、基準値を弾き出しているという。
正体不明の変数は1つではなく、14もあるかもしれないということだ。四半期報告はこれ以上の詳しい内容には触れておらず、基準値を算出する際に公認銀行の予想をどう比重付けしているのかも明らかにしていない。
人民銀行の追加説明に対する市場関係者の反応は冷ややかだ。
在上海の中国系中堅銀行のトレーダーは「母なる人民銀行が基準値設定でコントロールを強め、最終的な権限を持つことに変わりはない」と述べ、算出方法の見直しで新たな不透明さが生じたのは市場改革の流れに逆行しているとの見方を示した。
別の中堅銀行のトレーダーも、カウンターシクリカル要因は当局が市場に政策意図を示唆する手段としての側面が大きいと指摘。「外為市場の透明性を高めるという長期目標からすると、良い手段ではないだろう。透明性が犠牲になっており、価格形成を市場に委ねるという改革を後退させた」と述べた。
ナティクシスは18日付ノートで、公認銀行の予想を完全に管理しているのは中銀だけで、未知の要因は中銀が人民元の基準値のコントロールを強めるのに寄与していると分析する。
OCBC銀行のシエ氏も「人民元バスケット指数とドルのバスケット指数の連動性が破壊された」と話した。
一方、人民銀行は四半期報告で、見直しにより算出方法は経済の基礎的諸条件がより良く反映されるようになったと主張。「カウンターシクリカル要因は為替の需給のトレンドや方向を変えるものではなく、市場の群集効果を適切に取り除くもので、市場とは対立しない」と論じた。
(Winni Zhou記者、John Ruwitch記者)

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