コラム:米中貿易交渉、初戦の勝者はどちらか

コラム:米中貿易交渉、初戦は中国側がトランプ氏に辛勝
 5月12日、中国は米国との貿易交渉で、初戦に競り勝ったようだ。写真はロス米商務長官。ワシントンで9日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)
Gina Chon and Pete Sweeney
[ワシントン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は米国との貿易交渉で、初戦に競り勝ったようだ。中国が米国産牛肉と米金融機関によるアクセスを広げるのと引き換えに、米国側は鶏肉の輸入を拡大し、中国の銀行にも門戸を開く可能性がある。出だしは好調だが、中国側が大きく譲歩したわけではない。
今回の合意は、貿易不均衡解決のため米中が4月に合意した「100日計画」に基づくもの。コミー米連邦捜査局(FBI)前長官の更迭問題で揺れ、得点稼ぎを焦っていたトランプ政権は、中国から譲歩を引き出したことを即座に自慢した。
合意ではビザやマスターカードなど米国の決済サービス企業が中国市場への進出を認められる方向となったほか、米銀2行が債券引き受けのライセンスを得る見通しだ。
しかし、合意は米国の対中貿易赤字の削減にはあまり役立たないだろう。同赤字は2016年に3500億ドル近くに達し、この3月にはさらに拡大した。強固な牙城を築き、百戦錬磨の中国企業に米国企業が戦いを挑むのは容易ではない。例えば電子決済サービスの分野では、中国が米国を多くの面で大きく引き離している。
農産物の自由化は遅すぎたぐらいだが、双方の利益になる。米国産牛肉は質が高く、競争相手は中国産ではなく他国からの輸入牛肉だ。鶏肉に関しては、中国の消費者はもも肉を好むため、米国人が好きなむね肉が輸出に回るのは都合が良い。中国産鶏肉が米国で食の安全問題を引き起こす恐れはあるが。
しかし米自動車メーカーにとっての障壁や、中国国有の重工業企業によるダンピング(不当廉売)など、双方の利害が対立する問題にはほとんど手が付けられていない。今回のような小幅な措置が、両国が長年交渉を続けている包括的な投資協定にどう影響するのかも不透明だ。米国側がより良い条件を引き出したいなら、もっと押しを強くしなければならないだろう。
●背景となるニュース
*米中は7月半ばまでに米金融機関のアクセス拡大および、牛肉や鶏肉の貿易拡大に向け行動を起こすことで合意した。
*米財務省の統計によると、米国の対中貿易赤字は昨年3470億ドルだった。
*中国は米農産物にとって最大の輸出市場で、輸出額は2000年から1100%超増えて16年には214億ドルとなった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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