コラム:「グリーン・ニューディール」で温暖化議論が本格化か
Richard Beales and Gina Chon
[ニューヨーク/ワシントン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米民主党の議員グループが公表した温暖化対策の決議案「グリーン・ニューディール」は漠然とした内容である上に粗が目立ち、物議を醸す内容だ。幅広い政策を導入して気候変動と社会的な問題を一気に片付けてしまおうという目論みで、近いうちに政治的に実現できる可能性は乏しい。
しかし発想のスケールが大きく、少なくとも国内で気候変動を巡る議論に火を付けるきっかけになりそうだ。
国連世界気象機関(WMO)は今週、過去4年間の気温は過去最高だったと発表し、気温上昇は温室効果ガスの排出と関連しているとの見方を示した。米政府が昨年11月に公表した「第4次全米気象評価第2巻」によると、気候変動が米経済に与える損害は今世紀末までに数千億ドル規模に達する見通し。
トランプ政権は依然として気候変動の脅威を歯牙にもかけないが、民主党議員の間では、来年の大統領選でトランプ氏と対決する際に気候変動問題を重要な争点にしようとする動きが広がりつつある。
若手のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員や、10年前に同じような目標を掲げて法案を提出しているエドワード・マーキー上院議員などメディアの活用がうまい議員がそろっているので、かつてバーニー・サンダース上院議員が国民皆保険制度を提案したときと同じように、各政治家はいやでもより細かな対策をひねり出すことを迫られてもおかしくない。
7日に公表された決議案には温室効果ガス排出を10年以内にゼロにすることや、産業の脱化石燃料化、政策変更で影響を受ける人々への支援、皆保険制度など他の福祉策の導入などが盛り込まれている。気候変動を社会問題と結び付けたことで、こうした環境変化とその対応が、社会的弱者に最大の被害を与える可能性が高いことが浮き彫りになっている。
ただ決議案は具体性に欠けており、疑問を呼び起こす。リベラル派目線で望ましい目標をいくつも掲げたことから、常に対立相手に非現実的な社会主義者とのレッテルをはろうとする共和党にとっては、格好の攻撃対象になり得る。化石燃料から再生可能エネルギーへの重要な橋渡しとなりそうな原発にいっさい触れていないという不備もある。
さらに巨額の財政支出を伴うのも問題だ。もっとも議会は財源のないまま大型減税法案を可決している。それだけに財源をどうするのかという批判よりも、将来の繁栄を確保する必要があるならコスト論など大した意味はない、というオカシオコルテス氏の主張の方が、共感は得やすい。
いずれにせよ、オカシオコルテス氏とマーキー氏が野心的な計画を進めることで、遅ればせながらも真剣が議論が巻き起こるだろう。
●背景となるニュース
・米民主党の議員グループは7日、国内の温室効果ガス排出を10年以内にゼロにすることなどを盛り込んだ決議案「グリーン・ニューディール」を公表した。エドワード・マーキー上院議員と若手のホープとされるアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が代表して内容を明らかにした。
・決議案は政府主導でクリーンなエネルギーとインフラへの大規模な投資を行い、米経済の転換を図るのが狙い。法制化を見据えている点で初の取り組みだが、法的な拘束力はない。
・決議案は(1)交通インフラの近代化(2)製造業・農業セクターの二酸化炭素排出量削減(3)建物や住居のエネルギー効率の改善(4)土地保全の推進─などを求めている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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