コラム:印モディ政権、予算案でなりふり構わぬ票集め
Una Galani
[ムンバイ 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インドのモディ政権は2019/20年度(2019年4月─20年3月)の予算案発表で、なりふり構わぬ票集めに打って出た。総選挙を前に、税収不足にもかかわらず大盤振る舞いにおよび、緊縮財政の看板は傷ついたが、続投のチャンスは広がった。
ゴヤル財務相代理は1日の予算案発表の機会をとらえ、政権奪取から過去5年間に与党・インド人民党が成し遂げた経済面での成果をおおいにひけらかした。ゴヤル氏によると、この間の国内総生産(GDP)の平均伸び率は1990年代以来最大で、2桁だったインフレ率も平均4.6%に沈静化した。こうした説明は、歳出を拡大する前に投資家を安心させるのが狙いかもしれない。
今回の財政出動で最も大きな恩恵を受ける層には、所得の落ち込みに苦しむ農家が含まれる。政府は保有農地が5ヘクタール以下の農家には1件当たり約6000ルピー(85ドル)を銀行口座に直接振り込むと約束した。CLSAの試算によると、こうした小規模農家は全体の9割程度を占める。
インドは農業従事者が全労働人口の半分を占めるため、こうした政策の集票効果は絶大だ。また、典型的な農業ローンの帳消しは、貸金業から資金を借りている農家には届かないため、今回の策の方が効果が高い。
ゴヤル氏は貧困層を対象とする新たな年金制度や、所得税の非課税限度額の実質的引き上げもぶち上げた。この日のインド株式市場は消費拡大への期待から、自動車株や消費財株の主導で主要株価指数が上昇した。
モディ政権が緊縮財政への取り組みを断念したのは明白だ。来年度の財政赤字の対GDP目標は3.4%と、従来の3%程度から引き上げた。財政はインド準備銀行(中央銀行)からの国庫納付への依存度が高まるだろう。簿外の資金調達も増え続けているとみられ、既に会計検査院が警戒する水準となっている。モディ首相は再選に向けて、可能なすべての手を打った形だ。
●背景となるニュース
・インドのゴヤル財務相代理は1日、2019/20年度(2019年4月─20年3月)の暫定予算案を発表した。財政赤字の対国内総生産(GDP)比目標は3.4%で、従来の3%前後から引き上げた。
・18/19年度の財政赤字の対GDP比も3.4%で、目標の3.3%を小幅ながら超過した。
・インド統計局は先に18/19年度のGDP成長率が7.2%になるとの見通しを示した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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