コラム:米LNGに関税、中国の報復戦略は「諸刃の剣」
Gina Chon and Lauren Silva
[ワシントン/ダラス 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の米エネルギーに対するダブル攻撃は効果的だが、同時にリスキーでもある。中国政府は、急成長している米輸出品の液化天然ガス(LNG)に関税をかける方針だ。イラン産LNGでその穴を埋めることは可能だが、米国による対イラン制裁を無視することになる。
LNGに対する25%の関税は、中国が3日発表した600億ドル(約6.6兆円)相当の米国製品に輸入関税をかけるとした措置の一環で、再びトランプ米大統領の急所を突くものだ。
中国が大豆や小麦、トウモロコシや牛肉を含む340億ドル相当の米農産物に関税をかけたことを受け、トランプ大統領は、中国が自身の支持者の中核をなす農家を標的にしており、「悪意がある」とすでに批判していた。
トランプ大統領は、米国の「エネルギー支配」を確立すると約束しており、とりわけLNGを売り込んでいる。米国は2017年、前年比で約4倍となる日量20億立方フィートのLNGを輸出した。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、中国は3番目に大きな買い手である。米企業は成長する輸出市場に対応するため、港やLNGチェーンの設備を拡張している。
中国は米国産LNGの一部をイラン産に置き換えることが可能だ。米国が、11月6日の中間選挙の前日にイラン産原油やエネルギーに対する制裁を復活するとしているにもかかわらず、中国政府は8日、イランとの取引を続けると発表した。報復関税による雇用喪失や売り上げ減少への懸念が高まる中、共和党議員はトランプ大統領に中国との緊張緩和に努めるよう求めている。
現在すでにイラン最大の貿易相手国である中国が、イランからLNGを購入すれば、米国による対イラン制裁の穴を埋めることになる。その一方で、トランプ大統領が活気づけようとしている米国内産業に対するプレッシャーは高まるだろう。S&Pグローバル・プラッツによると、6─7月のイラン産原油・ガス輸出は各国が米制裁の再開に備える中で落ち込んだが、対中輸出は11%増加した。
トランプ大統領は7日、「イランと取引する者は、米国と取引しないようになる」とツイッターに投稿した。中国の銀行や企業は、ドル決済ができなくなったり、刑事訴訟に直面したりする可能性が出てくる。あるいは、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)<000063.SZ> <0763.HK>を米国内で廃業寸前まで追い込んだような輸出規制に直面するかもしれない。同社は2017年、米国による対イラン制裁に違反したと認めた。
中国は、トランプ大統領が先に折れると踏むリスクの高い賭けに出ようとしている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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