コラム:米民主2候補が競う医療保険政策、コロナ問題で波紋も

コラム:米民主2候補が競う医療保険政策、コロナ問題で波紋も
3月11日、米国民の神経を緊張させてきた「医療保険制度問題」に、新型コロナウイルス問題が新たに加わってきた。写真は2月、米サウスカロライナ州チャールストンで行われた討論会で握手するサンダース氏(左)とバイデン氏(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)
Jennifer Saba
[ニューヨーク 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国民の神経を緊張させてきた「医療保険制度問題」に、新型コロナウイルス問題が新たに加わってきた。大統領選の民主党候補指名を争うサンダース上院議員とバイデン前副大統領の2人は、この医療保険制度をめぐる問題で、極めて異なったアイデアを持っている。
米医療保険制度は、世界でも最もコストの高い部類に入る。カイザー・ファミリー財団が今年2月に実施した調査で、この問題が有権者の最優先事項となったのもうなずける。
新型ウイルスを巡る不安に加えて、米最高裁では今秋、10年前にオバマ政権で成立した医療費負担適正化法(ACA)の廃止につながりかねない訴訟案件が控えており、医療保険制度問題は残りの予備選・党員集会や11月の本選に向けて、議論の中心であり続けるのは間違いない。
米国民の約4分の1に当たる7800万人は、十分な保険に入っていないか、全く加入していない。適正化法は公的保険の選択肢を拡大することで加入者を増やした。ところが、トランプ政権が同法の効力を減じる措置に出たこともあり、この制度は今や弱体化している。
バイデン氏は現行制度を補強することで、国民の約97%の加入を可能にする意向。雇用主の提供する保険プランに入れる国民も、公的保険に加入できるようにする内容で、コストは家計の所得に連動。中間層には保険料支払いを助けるための税額控除を適用する。財源は、キャピタルゲイン税の引き上げと、所得税の最高税率を約40%に上げることで確保したい考えだ。
一方のサンダース氏は、政府が運営する国民皆保険「メディケア・フォー・オール」の設立が公約の中核だ。保険の対象を特定の医師ネットワークに限定せず、保険料支払いをなくし、患者自己負担もゼロにする。民間の医療保険は廃止される。医学誌アナルズ・オブ・メディシンの調査によると、実現すれば米医療業界の現在の年間管理費8000億ドルのうち75%が削減される。
だが、サンダース氏の提案は詳細が不明。特に公的医療サービスに関する政府の運営費がどれだけ必要になるかが示されていない。米シンクタンク「責任ある連邦予算委員会」の試算では、サンダース氏の案では向こう10年間で約13兆ドルの政府支出が発生するが、バイデン氏の案は8000億ドルにとどまる。
バイデン氏は10日の予備選・党員集会で快勝し、指名獲得に向けて大きく前進した。だが、現行の医療保険制度を圧倒しかねない新型コロナの急拡大ぶりが意味するのは、サンダース氏の高くつく制度計画の方が、もしかすると指名争いで生き残れるのか、ということかもしれない。
●背景となるニュース
*11月の米大統領選の民主党候補を選ぶ予備選と党員集会が10日、6州で行われ、中道バイデン前副大統領がミシガン州含む4州を制した。左派サンダース上院議員はノースダコタ州で勝利した。
*次の民主党候補者討論会は15日、フェニックスで予定される。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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