コラム:ECBに緩和の「白紙委任状」、独マイナス成長で
Swaha Pattanaik
[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドイツが4─6月期にマイナス成長となったことで、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は大胆な金融緩和に白紙委任状を与えられた格好だ。緩和に対するドイツの抵抗は和らぐだろう。
ドイツ連邦統計庁が14日発表した4─6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0.1%減少した。同国では弱い経済指標の発表が相次いでおり、マイナス成長に意外感はなかった。国際貿易を巡る緊張と世界的な景気減速が、輸出に依存するドイツの製造業に影を落とした。個人消費の底堅さが景気の下降に歯止めをかけているが、製造業の問題は今後広がるかもしれない。
5日発表された7月の購買担当者景気指数(PMI)では、サービス部門の指数が6カ月ぶりの低水準となり、企業からは経済成長と自動車セクターの今後について懸念が示された。
確かにドイツの失業率は5%と、今年付けた過去最低水準をわずかに上回るにすぎない。しかし雇用創出のペースは鈍り、消費者の士気は弱まっている。先月発表されたGfK消費者信頼感指数は3カ月連続で低下し、2017年4月以来の低水準となった。
消費が弱まった場合、ドイツであれば簡単に財政支出を増やすことが可能だ。なにしろ欧州委員会は5月、同国の財政収支が今年、対GDP比1%の黒字になるとの予想を示している。しかしメルケル首相は13日時点でもなお、財政刺激策を拡大する理由はないと述べている。
ECBの金融政策は、ドイツの財政抑制をある程度補う可能性がある。ドラギ総裁は7月の理事会後の記者会見などで金融緩和を示唆しており、市場は9月の緩和を予想している。
ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁は過去に金融緩和に拒否感を示している上、ドイツ国民の一部からはマイナス金利政策に不満の声が上がっている。しかしワイトマン氏は既に姿勢を軟化させており、足元の景気悪化によって国民もECBの金融緩和を受け入れやすくなるかもしれない。10月末に退任するドラギ総裁は緩和を実施し、大手を振って舞台を去ることができる。
●背景となるニュース
*ドイツ連邦統計庁が14日発表した4─6月期のGDP速報値は前期比0.1%減少した。1─3月期の確報値は同0.4%の増加だった。
*統計庁は、輸出が輸入以上に大幅に減少しており、貿易動向が景気減速を招いたと説明した。
*GDPにプラス寄与したのは、個人消費、政府支出、固定資本形成などの内需。異例の暖冬により1─3月期に大きくプラス寄与した建設は減少に転じた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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