コラム:OPECの地盤沈下、エクアドル脱退表明で浮き彫りに

コラム:OPECの地盤沈下、エクアドル脱退表明で浮き彫りに
10月2日、サウジアラビアにとって、エクアドルの石油輸出国機構(OPEC)からの脱退は小さい問題と見なせるかもしれない。写真はOPECの旗。ウィーンの本部で2018年12月撮影(2019年 ロイター/Leonhard Foeger)
Anna Szymanski
[ニューヨーク 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビアにとって、エクアドルの石油輸出国機構(OPEC)からの脱退は小さい問題と見なせるかもしれない。少なくとも先月のドローンによる石油施設への攻撃や、サウジのエネルギー産業鉱物資源省の再編に比べれば。それでも、エクアドルがOPECから出ていこうとするのは、厄介な事態と言える。なぜなら、OPECに加盟していることの価値が低下しつつあるという証明だからだ。
エクアドルがOPECを脱退するのは同国固有の理由からで、主に政治的な事情が絡んでいる。モレノ大統領が今年2月に国際通貨基金(IMF)から取り付けた42億ドルの融資は、緊縮財政策の採用が条件となっている。こうした措置は不人気で、エクアドルは過去20年余りの間に大統領が10人も誕生したお国柄でもある。そこでOPECを脱退して原油を増産できれば、モレノ氏が政治的体面を保つ上でプラスとなる。
サウジもエクアドルのOPEC脱退をそれほど悲しまないかもしれない。エクアドルの生産量は、OPECで割り当てられた枠の上限を日量約2万バレル上回っている。大した超過幅でないように思われるだろうが、エクアドルはこれまでOPECが定めた生産量をほとんど守ってこなかった。だから同国の生産を制御できなくなっても、サウジの原油価格をコントロールする力を阻害しないだろう。
ただOPECの一員でいるメリットはもはやコストよりも小さいように見える点で、今回の動きは幸先が良くない。エクアドルが当初OPECに加わった1973年と再加盟した2007年には、これによって海外の大口買い手との交渉力を強化したいという思いがあった。ところが今、エクアドルは生産力の高い新規油田の開発や、外国からの投資の積極的な呼び込みを通じ、自力で石油関連収入を増やせると考えている。OPECからの支援は、加盟に伴う煩わしさに見合う価値はないようだ。
一部の産油国は、引き続きOPECに魅力を感じている。赤道ギニアとコンゴ共和国は近年になって加盟し、21年間離れていたガボンも復帰した。もっともこれらの国の生産量はいずれも日量35万バレル未満だ。一方でインドネシアやカタールといった、より生産量が多い幾つかの産油国はOPECを去った。
長い目で見ても、OPECの重要性が増す気配はない。米国のシェールブームによって原油市場への影響という面から強力なライバルが出現しただけでなく、温室効果ガス排出規制や再生可能エネルギーのコスト低下が原油需要の長期見通しに影を落としている。
エクアドルの脱退はサウジのOPECにおける支配的な地位を脅かすことはないが、OPEC自体の未来に好ましくないメッセージを送っている格好だ。
●背景となるニュース
*エクアドルは1日、来年1月1日に石油輸出国機構(OPEC)を脱退すると発表した。国内的な事情を満たすため増産する自由を得るのが目的だ。
*エクアドルの原油生産量は日量約54万5000バレルで、OPEC加盟14カ国では下から4番目。OPEC全生産量の2%弱にとどまる。
*エクアドルは1973年にOPECに加盟した後、1992年に一度脱退し、コレア大統領時代の2007年に復帰した。
*OPECは現在、原油価格下支えを狙って来年3月までの日量120万バレルの協調減産に取り組んでいる。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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