焦点:新興国に今年も格下げリスク、注目は中南米

焦点:新興国格付け、今年も下振れリスク警戒 注目は中南米
 1月21日、新興国の格付けは、世界経済の減速を受けて今年も総じて下がる方向のように見える。特に中南米諸国を巡る動きが中心になりそうだ。写真はブラジルのサンパウロで2016年撮影(2019年 ロイター/Nacho Doce)
Marc Jones
[ロンドン 21日 ロイター] - 新興国の格付けは、世界経済の減速を受けて今年も総じて下がる方向のように見える。特に中南米諸国を巡る動きが中心になりそうだ。
年初早々から暗いニュースが出ている。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)グローバルは先週、新興国の大口発行体の3分の1近くは現在、持続不可能な規模の債務を抱えていると警告し、アルゼンチンやブラジル、エジプト、レバノン、パキスタンなどが当てはまると指摘した。
フィッチ・レーティングスは、今年は格付け引き上げよりも引き下げの件数が再び多くなると予想。ムーディーズ・インベスターズが格下げの可能性を見込んでいる新興国は19カ国と、引き上げが期待できる11カ国のほぼ2倍だ。ムーディーズは「より脆弱な新興国やフロンティア諸国が最も大きなリスクに直面している」と述べた。
こうなったのは、過剰な借り入れと貿易摩擦、また一部の国が原油など価格変動が激しいコモディティ輸出に依存していることなどが重なった結果としてほとんど説明できる。
とはいえ、それぞれの国には目を向けるべき特殊事情も存在する。
フィッチの首席ソブリン・アナリスト、ジェームズ・マコーマック氏が、ある通貨が急落した際にその国の格付けがどうなったかを分析したところ、少なくとも1年間で通貨が3割安くなった国の格付けは平均2段階下がったことが分かった。より心配されるのは、過去1年半でそうした状況に該当した16件のうち、6件は最終的にデフォルト(債務不履行)に陥った点だ。
これはフィッチに昨年格下げされたトルコには不吉なニュースかもしれないが、格付けが「Bマイナス」のアルゼンチンにとってはより深刻な事態と言える。何しろアルゼンチンペソは昨年を通じて価値が半分以下になったのだ。ちなみに同国は2002年と14年にデフォルトを引き起こしている。
マコーマック氏は「さまざまなリスクが下向きになっている以上、(世界的な格付けに)下げ圧力が増したとしても驚かない」と述べた。
中南米では別の2カ国も、方向は対照的だがともに注目されるだろう。1つ目はブラジルだ。同国は近年、大手3社の格付けが全て投資適格級未満となっているものの、今年就任したボルソナロ大統領が経済改革を進めるとの期待で楽観的な見方が復活。通貨レアルは、年初来の値動きが世界トップ4に入るほど堅調に推移している。
S&Pが格付けの先行指標として用いているクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などを見ると、幸先が良い。既に市場は、ブラジルを実際の「BBマイナス」よりも2段階高い格付けのソブリン発行体として扱っているからだ。
もう1つはウルグアイで、マコーマック氏は投資適格級から「ジャンク」級に転落する恐れがあるとみている。
ウルグアイは現在、フィッチの格付けで投資適格級最下位の「BBBマイナス」。S&Pとムーディーズはもっと高いが、1つでも「ジャンク」級になってしまえば発行体は痛みを受けることが、欧州中央銀行(ECB)などの調査で判明している。
マコーマック氏は、ウルグアイの格下げについて聞かれると、特に同国が投資適格級を獲得して以降、債務が大幅に膨らんできたことから、可能性は十分にあると答えた。
主要新興国の中で、中国は対米貿易摩擦による逆風を乗り切るために景気刺激策を実施し続ければ、格下げ圧力に見舞われてもおかしくない。また格付け各社は、ロシアは米国から新たな経済制裁を科せられた場合、良好な格付け環境が損なわれる可能性があると警鐘を鳴らした。もっともロシアは債務水準が世界最低の部類に属するため、格下げされても打撃はそれほど大きくないだろう。

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