アングル:長引く737MAX運航停止、夏の「稼ぎ時」を直撃

アングル:長引く737MAX運航停止、夏の「稼ぎ時」を直撃
4月14日、通常であれば、米航空各社は最繁忙期の夏により多くのチケットを売って空席を埋めようとしのぎを削る。写真は3月、運航停止になり米カリフォルニア州のビクタービル空港に駐機されたサウスウエスト航空の737MAX型機(2019年 ロイター/Mike Blake)
Tracy Rucinski
[シカゴ 14日 ロイター] - 通常であれば、米航空各社は最繁忙期の夏により多くのチケットを売って空席を埋めようとしのぎを削る。だが、運航停止が続く航空大手ボーイング737MAX型機を抱えている会社は、機材不足と需要の高まりという、まったく様相の異なる問題に直面している。
燃料効率が良く、単通路型の737MAX型機が2件の墜落事故を起こして運航停止になったことで、米航空会社の春と夏の北半球運航スケジュールに大きな影響が出ており、繁忙期恒例の「利益獲得競争」に参戦できなくなる可能性も出ている。
「収益目標はすぐ目の前にあり、見えてはいるが、達成できない」と、米サウスウエスト航空のパイロット団体の広報担当者マイク・トレビーノ氏は言う。
737MAX型機の世界最大の運航会社で34機を保有するサウスウエスト航空と、24機を保有するアメリカン航空は、同型機を8月までの運航スケジュールから外した。
サウスウエスト航空のこの決定は、6月8日─8月5日の1日の運航数4200便のうち、160便がキャンセルされることを意味している。アメリカン航空の場合、8月19日までの運航停止により、夏季1日の運航便数の1.5%にあたる115便がキャンセルされることになる。
他のライバル航空会社と異なり、737型機しか保有していない格安航空会社(LCC)のサウスウエスト航空は、737MAX便のキャンセルなどにより2月20日─3月31日だけで1億5000万ドル(約168億円)の収益減があったと推計している。
航空各社は現在までのところ、737MAX型機運航停止の影響を第1・四半期を超えて推計するには時期尚早だとしている。だが、長期間のキャンセルが予定されていることは、急速に売り上げを伸ばしていた同型機の早期の運航再開を各社が予期していないことを示している。
737MAX型機は、昨年10月にインドネシアのライオン航空機が墜落したほか、今年3月にエチオピア航空機が墜落したことを受けて運航が停止された。わずか5カ月の間に相次いで起きたこの2件の墜落事故では、乗客乗員は全員死亡した。
ボーイングには、両事故で注目を集めた失速防止の制御ソフト「MCAS」の修正版を提供し、同型機が運航再開に十分に安全であることを世界各国の航空規制当局に納得させるよう、プレッシャーがかかっている。これには、最低でも90日はかかるとみられている。
長期にわたる運航停止は、北半球の航空会社にとってこれ以上ない最悪のタイミングで発生した。米運輸統計局(BTS)によると、航空各社が1席・1マイルあたり最高の収益を稼ぐのは6─8月で、その間各社は保有機をフル回転させる。
アメリカン航空の経営陣は従業員と顧客に宛てた14日付の手紙で、737MAX型機は「早期に」再認証されると考えているとする一方で、「年間で一番の繁忙期」に信頼と信用を顧客に与えたいとした。
アメリカン航空は6月初旬まで1日当たり約90便のキャンセルを見込むが、夏季の最繁忙期には運航便を増やす予定で、機材繰りの余裕は低下する。
「われわれにとって困難な状況になることは否定しない」と、アメリカン航空の広報担当者、ロス・ファインスタイン氏は認める。「だからこそ、機材不足が原因でキャンセルをさらに延長せざるを得ない場合は、なるべく早期に決めることにしている」
供給座席数の減少により、特にビジネスクラスで、夏季の運航日直前の最終運賃が高めになる可能性があると、航空コンサルタントやアナリストは予測する。
737MAX型機14機を保有するユナイテッド航空は、同型機をより大きな777型機や787型機に差し替えることで、大規模なキャンセルを回避してきた。だが同社のスコット・カービー社長は先週、このやり方はコストが大きく、永遠に続けられるわけではないと警告した。
全体的にみれば、737MAX型機はサウスウエストが保有する機体の5%でしかなく、アメリカンやユナイテッドではこの割合はさらに低下する。だが、機材繰りへの負担は、追加の737MAX型機の納品が凍結されたことで増大することになる。
サウスウエストは今年、同型機41機の納品を控えている。アメリカンは16機、ユナイテッドは14機の納品を受ける予定だ。
こうした事態に対応するため、世界各国の737MAX型機の運航会社は、他の保有機の1日当たりの運航回数を1─2回増やしたり、必須ではないメンテナンス作業を延期するなどしている。
また、機体のリースを延長したり、使っていない機体を再利用することを検討している航空会社もあるが、737MAXの運航再開がいつになるか分からない現状では、明確な、または安価な選択肢はないと、コンサルタントは話す。
ユナイテッドは、第1・四半期の決算を16日に公表する。サウスウエストは25日、アメリカンは26日に予定している。
(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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