焦点:欧州第2次金融商品市場指令、満を持して来年初めに始動

焦点:欧州第2次金融商品市場指令、満を持して来年初めに始動
 12月22日、EUの金融資本市場に対する包括的な規則の最新版「第2次金融商品市場指令(MiFID2)」が来年1月3日に実施される。ロンドンで昨年1月撮影(2017年 ロイター/Stefan Wermuth)
[ロンドン 22日 ロイター] - 欧州連合(EU)の金融資本市場に対する包括的な規則の最新版「第2次金融商品市場指令(MiFID2)」が来年1月3日に実施される。内容の複雑さで予定より1年遅れるが、規制当局がぎりぎりまで支援作業に携わって混乱を避けるという満を持した形の始動となる。
MiFID2は、銀行や資産運用会社、トレーダーに詳細な取引データ報告を義務付け、株式、債券、コモディティ、デリバティブの市場実態を明るみにしようとしている。取引の透明性を高め、投資家保護を強化することで、2007─09年の世界金融危機で得た教訓を生かそうという狙いだ。
細かいデータは取引情報蓄積機関に送られ、規制当局はそれを精査して前回の危機前に発見できなかったバブルの萌芽を見つけ出す。
銀行や他の金融機関は、MiFID2実施に備えて既に多額の投資を行ってきた。調査会社エクスパンドの報告によると、世界最大手クラスの銀行と資産運用会社が今年、MiFID2対応に費やした金額は21億ドルに上る見込みだ。
銀行の担当者は、1月3日から報告システムがきっちり作動するかどうか夜を徹して点検することになる。資産運用会社などにとっては、こうした迅速な報告を求められるのは初体験だが、違反すれば制裁金処分を科せられる。
MiFID2の導入作業を監督している欧州証券市場監督局(ESMA)は今週、最後の工程に対処し、市場の不安を和らげるためにいくつかの声明を公表。マイヨール局長はロイターに「ESMAは各国の規制当局と協力し、最終段階においてもMiFID2への規則移行円滑化に万全を期す取り組みを実行している」と語った。
ただこの期に及んでもMiFID2を国内で完全に法制化できたのはEU加盟28カ国中11カ国にとどまっており、ESMAは本拠とする国が法制化手続きを終えていない場合も含め、すべての金融機関がMiFID2を導入できると念を押している。
もちろんドイツやフランス、英国といったEU域内最有力の金融センターを要する諸国は法整備が済んでおり、大手行も準備は万端といえそうだ。バークレイズの欧州マクロ・ディストリビューション責任者ジョバンニ・マツォッキ氏は「初日は事態が順調に推移すると期待される。われわれはできる限り態勢を整えている」と自信を見せた。
より規模が小さい金融機関は、十分な人員を確保できないのではないかとの懸念が出ているが、フィデッサのシニア規制アドバイザーのクリスチャン・ボイト氏は「規制当局が対応に必要な時間的余裕を与える限り、うまくいくだろう」と楽観的だ。
英金融行動監視機構(FCA)は、MiFID2について当初は金融機関ごとの状況に応じた導入を促す方針を示している。
<創造的破壊>
ESMAは蓄積された取引データを利用して、コモディティの持ち高の上限を設定したり、ダークプール(私設取引所)における株式取引の制限を行う。MiFID2によって投資家はどの取引プラットフォームが顧客に最も最適な条件を提示しているかより多くの情報も得られるし、資産運用会社が株式の調査費用の負担者を投資家に明示する制度も始まる。
一方、最初のMiFIDがまとめられた基本的な目的は、株式取引に新規参入を促し、市場の競争力を高めることだった。実際、私設電子取引システムのChi─X(チャイエックス)は、欧州で最大級の株式取引プラットフォームへと成長し続けている。
当局としては、MiFID2がこうした「創造的破壊」を債券など他の資産クラスにも波及させ、金融機関の顧客サービス改善につながることを期待している。
(Huw Jones記者)

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