コラム:米フェイスブック、「金のガチョウ」を殺すか

Jennifer Saba and Robert Cyran
[ニューヨーク 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 写真共有アプリ大手インスタグラムは、親会社のフェイスブックにとって今や重要な収入源だ。
しかしインスタグラムの最高幹部2人の辞任を機にフェイスブックが両社の経営の一体化を進めれば、「金の卵を産むガチョウ」をみすみす殺してしまうことになりかねない。
フェイスブックは2012年に10億ドルでインスタグラムを買収したが、フェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)にとってこれは最良の一手だった。
インスタグラムの創業者であるケビン・シストロムCEOとマイク・クリーガー最高技術責任者(CTO)はフェイスブックの巨大な広告プラットフォームと販売力を活用し、フェイスブックから独立を保ったまま事業を拡大した。
フェイスブックは顧客データの利用を巡る論争に巻き込まれたが、インスタグラムのユーザーは平静を保っている。ハイテクサイト「ザ・バージ」の調査によると、回答者の6割はインスタグラムの親会社を知らなかった。
親会社のフェイスブックと距離を置くインスタグラムの経営は恩恵をもたらし、月間アクティブユーザー数は10億人を超えるまでになった。フェイスブックはインスタグラムの売上高を明らかにしていないが、イーマーケッターの推計によると今年の広告収入は80億ドルと、2016年の4倍以上に達する見込みだ。
Breakingviewsの推計によると、インスタグラムは単独での企業価値が800億ドル強に上る。
一方、フェイスブック自体は投資家を魅了する力が薄れつつある。
欧州、カナダ、米国では中核プラットフォームでユーザー数の伸びが止まった。ロシアがフェイスブックを使って2016年の米大統領選に介入した問題が追い打ちとなり、世界各国の規制当局によって四方八方から調査を受けている。幹部の辞任も相次ぎ、売上高の伸びが鈍ったと認めた今年夏以降、時価総額が1500億ドル相当も吹き飛んだ。
ザッカーバーグCEOが、インスタグラムが産む「金の卵」からもっと搾り取りたいと考えるならば、それは理解できる。インスタグラムのトップ2人の辞任を受けてフェイスブックとの経営の一体化はその一助になるだろう。
もしザッカーバーグCEOがユーザーやユーザーのデータを使って利益を高めることに熱心になりすぎると、ちょうどフェイスブックの中核事業で起きたように、ユーザーや当局者の離反を招くだろう。
インスタグラムというブランドには大きな価値があり、成長に飢えたオーナーがうっかりとガチョウの首を絞めてしまえば残念な結果を招くだろう。
●背景となるニュース
・フェイスブック傘下の写真共有アプリ大手インスタグラムは、共同創業者のケビン・シストロムCEOとマイク・クリーガー最高技術責任者(CTO)がいずれも辞任した。
・シストロム氏は24日のブログに「休みを取り、好奇心と創造力を再び探求したい」と投稿した。
・フェイスブックは2012年にインスタグラムを10億ドルで買収した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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