アングル:トランプ大統領、次期FRB議長に誰を選ぶか

アングル:トランプ大統領、次期FRB議長に誰を選ぶか
 10月5日、トランプ米大統領はこれまでに、次期連邦準備理事会(FRB)議長候補者4人と面談した。写真は2016年、ワシントンのFRBビル(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
[5日 ロイター] - トランプ米大統領はこれまでに、次期連邦準備理事会(FRB)議長候補者4人と面談した。イエレン現議長の任期が来年2月で切れるため、数週間中に次期議長を決定する見通し。
候補に挙がっているイエレン氏(続投)、パウエルFRB理事、コーン国家経済会議(NEC)委員長、ウォーシュ元FRB理事の4人の横顔は以下の通り。
●コーンNEC委員長(57歳)
経歴:2006年から17年にかけてゴールドマン・サックスに勤務し、最高執行責任者(COO)などを務めた。
学歴:アメリカン大のビジネス学士号。
政策姿勢:FRBの政策が、他国の中央銀行の通貨安政策によって「制約」されていると述べたことがある。
候補者としての強み:FRBがバランスシートの縮小に向かう中、実務家としての知識が生かせる。
トランプ政権で重要な役割を担い、ホワイトハウスと共和党議員の信任が厚い。
弱み:経済学を正式に学んでいない。
議会上院での承認手続きでは、ゴールドマンでの長年の経歴と2億6000万ドルを超える個人資産が反感を買う可能性がある。
トランプ大統領の白人優越主義的発言を批判した。
●パウエルFRB理事(64歳)
経歴:弁護士にして投資銀行家。1997年から2005年まで投資会社カーライル・グループのパートナー。ジョージ・W・ブッシュ政権下で財務省高官。2012年から現職。
学歴:プリンストン大の政治学士号。ジョージタウン大法学士。
政策姿勢:イエレン議長と歩調を合わせて緩やかな利上げを支持し、反対票を投じたことはない。ドッド・フランク法(金融規制改革法)の一部緩和を提唱し、銀行の自己勘定取引を制限するボルカー・ルールの修正方法について発言したこともある。
候補者としての強み:当たり障りのない人選で、イエレン氏と交代しつつも政策の継続性を保てる。
現FRB理事の中で唯一の共和党員であり、経済を回復に導く一助となった実績があり、超党派の支持が得られそう。
金融市場と金融規制に通じる。
弱み:わざわざイエレン氏と交代させても、FRBの政策はあまり変わらない。
正式な経済学よりも金融市場や金融規制に詳しく、FRBの理事兼金融規制担当副議長となるランダル・クォールズ氏とかぶる部分が多すぎる。
●ウォーシュ元FRB理事(47歳)
経歴:2006年から11年までFRB理事。02年から06年までジョージ・W・ブッシュ政権の経済顧問、モルガン・スタンレーで7年間にわたり企業合併・買収(M&A)弁護士。
学歴:スタンフォード大で公共政策学士号。ハーバード大法学士。
政策姿勢:FRBは裁量権が大きすぎると主張し、FRBが経済を微調整すべきではないとの立場。1─2%の物価上昇率を目指すべきだと考えており、実質的な物価目標の引き下げを求めている。
候補者としての強み: ウォール街で知名度が高い。
妻のジェーン・ローダー・ウォーシュさんは化粧品界の大物ロン・ローダー氏の娘で、トランプ氏の旧友。
弱み:「低金利人間」を自称するトランプ氏からすると、タカ派過ぎる可能性がある。
米国の金融政策を刷新する必要性を唱え続けているが、イエレン議長やバーナンキ前議長のような経済学者ではない。
世界金融危機が起こった2008年に至ってもインフレに懸念を示した上、量的緩和(QE)第2弾を巡ってFRBを辞めた経緯が失点とみなされるかもしれない。
こうした経緯にもかかわらず、連邦公開市場委員会(FOMC)で反対票を投じたことは1度もなかった。
●イエレンFRB議長(71歳)
経歴:サンフランシスコ地区連銀総裁を務めた後、2010年から14年はFRB副議長。
学歴:イエール大で経済学博士号。
政策姿勢:FRB議長として、経済指標に応じた段階的な利上げを進め、緩やかなバランスシートの縮小を決めた。経済危機後の金融規制は、経済成長を犠牲にすることなく経済の安定性を高めたと主張。
候補者としての強み:FRBでの実績によって市場の信任を勝ち得、大きな混乱を招くことなく政策変更を行う手腕を示した。
米経済は成長、低失業率、株価上昇と好環境にあり、続投支持の根拠となり得る。トランプ大統領もイエレン氏が良い仕事をしていると公言した。
弱み:オバマ前大統領の置き土産というイメージを持たれかねない。
金融危機後の主要な規制を温存すべきとの考えであり、トランプ政権の規制緩和路線と摩擦を起こす可能性がある。
共和党指導部の中には、金融政策におけるFRBの裁量権を減らすべきとの考えがあるが、イエレン氏は抵抗している。

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