コラム:FCA、ルノーとの統合実現に向け対仏「譲歩」作戦
Lisa Jucca
[ミラノ 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)にとって、フランス政府をなだめすかすことはルノーとの統合を達成するための方便だ。
FCAのエルカン会長は、ルノーとの統合についてフランス政府の同意を得るために、いくつかの譲歩策を検討している、とロイターが2日報じた。新会社の取締役ポスト1つを用意し、ルノー株主へ特別配当を支払うなどの内容だが、これらが統合後に見込まれる年間50億ユーロの経費節減効果を損なったり、日産自動車<7201.T>からの統合反対を招く危険はないはずだ。
フランス政府は現在、ルノーの持ち分が15%で、議決権はその2倍保有する。恐らくエルカン氏からすれば、統合を進める上でフランス政府が最も重要な協議相手だろう。同国政府は統合案を「適切な機会」と評価しているものの、ルメール経済・財務相は国内の雇用が守られるという強力な保証や、新会社の取締役ポストが提供されない限り、承認しない姿勢もはっきり打ち出している。
一方でFCAが5月27日に示した当初案では、フランス政府の特別な議決権は失われ、新会社の取締役に関する明確な言及もない。これに対して同じくルノー株15%を保有する日産は、新会社の取締役ポスト1つを確保し、ルノーとのアライアンス(企業連合)を通じて10億ユーロの追加的なシナジー効果も得られることが約束されている。
ただ6月4日のルノー取締役会で統合の合意にこぎ着けたいFCAは、賢明にも歩み寄りの提案をしている。ロイターによると、提案にはフランス政府が新会社に取締役1人を送り込めることや、フランス国内の雇用を最低4年間削減しないこと、新会社の拠点をパリ周辺に置くことなどが盛り込まれた。さらにルノー株主は、既に統合に伴う株式交換で10%のプレミアムを提示されている上に、特別配当まで受け取れる。
こうした譲歩策は、統合によって期待される将来の効果との関係でも適切に管理できるようだ。フランスのマクロン大統領は有権者に対して、自分が同国の利益を守ったとアピールする必要がある。そこでエルカン氏は、これらのカードを隠し持っていた公算が大きい。イタリアのナショナリスト的な現政権が抗議するかもしれないが、実際に相応の投資をしていない状況で統合条件を大きく修正できるわけではない。FCA側が、フランス政府のプライドを少しばかり尊重することは、新たな自動車業界再編の先頭ランナーという優位性を維持する対価として理にかなっている。
●背景となるニュース
*FCAはルノーとの統合を進める上で、ルノー株15%を保有するフランス政府に対するいくつかの譲歩を検討している。ロイターが2日、関係者の話として報じた。
*具体的にはルノー株主への特別配当や、フランス国内の雇用保証期間を2年でなく4年とすること、新会社の拠点をフランスに置くこと、フランス政府が新会社に取締役1人を送り込めることなどが盛り込まれた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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