コラム:FRBの窓口貸出、中小銀行には「使えない」わけ

コラム:FRBの窓口貸出、中小銀行には「使えない」わけ
3月16日、米連邦準備理事会(FRB)は、大手金融機関の力を借りて、割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)貸出制度の利用を拡大させようとしている。写真は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、人影もまばらなシアトル中心部(2020年 ロイター/Lindsey Wasson)
Gina Chon
[サンフランシスコ 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)は、大手金融機関の力を借りて、割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)貸出制度の利用を拡大させようとしている。同制度の利用が与える不名誉という悪い印象を軽減するため、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)を含む米銀大手8行が制度を利用すると表明したが、中小銀行が追随するかどうかは明らかではない。
8行が加盟する業界団体の米金融サービス・フォーラム(FSF)は16日、新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受ける顧客を支援するため「あらゆる規模」の銀行が安心してディスカウント・ウィンドウを利用できるようにするのが狙いと説明した。同時に8行は十分な流動性を有しており、FRBが利用を促していると強調した。
2008年に多くの銀行が最後の砦としてのFRBの役割を利用した際は話が別だった。利用した銀行の名前は報道機関による訴訟を受けて2011年にFRBが公表を余儀なくされるまで秘密扱いだった。
2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)も、利用した銀行の公表を義務付けた。
同制度の利用が明らかになった銀行、とりわけ欧州の銀行は政治的な批判に直面した。米国の政治家は、FRBはドイツ銀行など海外の金融機関を支援するべきではなかったと批判。ワコビアなどは崩壊し、制度利用に伴う不名誉な印象を強調した。
政治的な圧力に敏感なFRBも、大手行の破綻時処理計画「リビングウィル(生前遺言)」で、同制度の利用を控えるよう要請した。
しかし、新型ウイルス流行により経済が大きな影響を受ける中、FRBは金利を引き下げ、貸出期間を最長90日にするなど方針を転換した。
FRBは大手行の不安を取り除くことに水面下で取り組んだ。バランスシート上の資本・流動性バッファーを踏まえると、JPモルガン・チェースなどの大手行は余裕があるだろう。しかし、コメリカやキーコープなど、原油価格の急落で顧客が打撃を受けている地銀は、ディスカウント・ウィンドウを利用することでさらなる問題が浮上するのを避けたいと考えるかもしれない。FRBの制度がどれだけ支援になるとしても、利用する銀行に対する政治家の批判を止めることもできない。
●背景となるニュース
*大手米銀8行は16日、米連邦準備理事会(FRB)の割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)貸出制度を利用する方針を明らかにした。
*米連邦預金保険公社(FDIC)と通貨監督庁(OCC)は16日、共同声明を発表し、各金融機関に対し、資金需要への対応や流動性リスクの管理、さらに貸しはがしといった信用収縮につながる行為の回避に向け、連銀窓口貸出(ディスカウント・ウインドウ)を利用するよう指示した。
*FRBは15日、プライマリークレジットの金利を16日から150ベーシスポイント(bp)引き下げ、0.25%にするとした。銀行がディスカウント・ウインドウから最長90日間資金を借りられるようにもした。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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