アングル:米FRBの大規模緩和、投資家は「最悪の事態」懸念

アングル:米FRBの大規模緩和、投資家は「最悪の事態」懸念
3月15日、米連邦準備理事会(FRB)が発表した大規模な金融緩和措置を受け、投資家は政策当局が新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃をどこまで効果的に処理できるのかとの懸念を深めている。写真は13日、ニューヨークのマンハッタンで撮影(2020年 ロイター/Andrew Kelly)
[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が15日発表した大規模な金融緩和措置を受け、投資家は政策当局が新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃をどこまで効果的に処理できるのかとの懸念を深めている。米国には景気後退の懸念があり、FRBの劇的な行動は事態の深刻さを浮き彫りにする形となったためだ。
金融市場が混乱し景気減速が表面化する中、新型ウイルスがもたらす影響は広がりつつあり、金融政策だけでは解決不可能との見方もある。
ジョーンズトレーディングのチーフ・マーケットストラテジスト、マイケル・オルーク氏は発表内容について「FRBが現状を非常に恐れていることを示唆する内容だ。打ち出された政策は非常に強力で、投資家を驚かせるだろう」と述べた。
FRBは15日、政策金利のゼロ付近への引き下げと債券買い入れの再開を発表。発表を受け株価指数先物はストップ安の展開となった。
市場関係者の間では、今回のFRBの動きは、10年以上前に金融危機からの脱却を目指して実施した一連の措置を思い起させるとの指摘がある。
カンバーランド・アドバイザーズのデビッド・コトク最高投資責任者は、 「市場はFRBに2007年、08年、09年の再演をみており、金融危機の再来が間近に迫っていると感じている」と警告した。
新型ウイルスの感染は世界的に広がり、各国政府は地域の封鎖や学校の休校、イベントの中止など相次いで対策を講じている。
ゴールドマン・サックスは第1および第2・四半期の米成長率予想を引き下げた。第1・四半期は当初予想の0.7%からゼロに、第2・四半期はゼロからマイナス5.0%に、それぞれ下方修正した。
チェリー・レーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は、「多くの活動が止まった今週の状況をみると、さらに状況が悪化し、深刻な景気後退があり得るとの考えは変わらない。ごく短期かもしれないが、かなり深刻になる可能性がある」との見方を示した。
PIMCOの国際経済アドバイザー、ヨアヒム・フェルス氏は、世界的な景気後退はもはや「既定の結論」と警告。「政府と中銀の仕事は、これまでも今後も、景気後退は比較的短期で経済恐慌にはならないということを確実にすることだ」と指摘した。
TDセキュリティーズのアナリストは、FRBがコマーシャルペーパー(CP)市場の支援措置を講じていないことに驚きを示している。CP市場は企業が短期の融資に利用しており、ここ数日ストレスにさらされている。
また、大規模な財政措置が求められる中、FRBが金融危機の教訓を利用しているように見えると指摘する向きもある。
OANDAのアナリストは、「財政措置が極めて重要で早急に必要とされる中、FRBも再び焦点を政府に戻した」と指摘した。
市場の鎮静化が難しいとしても、FRBは重要な措置を講じているとの声もある。
ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのチーフ・マーケットストラテジスト、カール・シャモッタ氏は、 「FRBは『出来ることは何でも』モードだ。政治家が財政刺激措置への支援を積み上げることができれば、相場上昇の可能性は高まる」と指摘した。
一方、ウイルス抑制の難しさも市場にとって最重要要因の一つとの見方もある。
フェデレーテッド・エルメスのチーフ株式市場ストラテジスト、フィル・オーランド氏は、 「感染の推移にも注意する必要がある。米政府は対応しているが、ウイルス封じ込めに進展がみられるか見極めなければならない」と述べた。
(Lewis Krauskopf記者)

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