コラム:米FRB、利下げの最終判断はやはり「データ次第」
Richard Beales
[ニューヨーク 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領は今週、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長の降格案について質問されると「彼の行動を見守ろう」と語った。そして19日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で、パウエル氏ら政策担当者は、トランプ氏が望む利下げではなく、政策金利をまた据え置くことを決めた。
利下げを考えるべき理由はいくつかあり、世界経済の成長が弱まっていることもその1つに含まれる。例えば国際通貨基金(IMF)は4月、世界経済成長率の見通しを3.3%に引き下げた。これに重なってくるのが、トランプ氏が中国などとの関税合戦をエスカレートさせていることで高まっている貿易の先行き懸念だ。
欧州中央銀行(ECB)や日銀の当局者からも、よりハト派的な発言が聞こえてきている。ドラギ総裁は18日、物価上昇が加速しないようなら追加緩和に動くと述べた。
そして金融市場の存在がある。FRBは、株価が高騰ないし急落している局面、もしくは歴史的に見て景気後退の到来を告げる信頼できる指標とされる長短金利の逆転が起きている局面でも、そうした事象から目を背けることはできない。
ただし市場にどう反応したり、どう対話したりしていくかを判断するのは難しい。FRBの使命は完全雇用と物価安定であり、市場を支えることではない。雇用情勢が堅調で、足元の物価が落ち着いている点を踏まえれば、利下げも利上げも緊急性は乏しい。
今年初め時点で、トレーダーは6月18─19日のFOMCで利上げが実施される確率が小さいながらもあると考えた。しかしCMEのフェドウオッチによると、18日までに利下げの確率を20%余り織り込む展開になっていた。利下げは実現しなかったとはいえ、今度は7月30─31日の次回FOMCで利下げされるのはほぼ確実との見通しに変わってきている。
FOMCメンバーの政策金利予想分布(ドットチャート)を見ると、3月段階では今年ないし来年中の利下げなどだれ1人念頭になかった。一方、19日のドットチャートに基づくと、半数近くが利下げを想定していることが分かる。FOMC声明からは、これまでの金利調整に際して「忍耐強く」対処するという表現が消え、代わりに「景気拡大を維持するために適切に行動する」との言い回しが加わった。
こうした動きは全て、6週間後に利下げを可能にするための布石だ。トランプ氏が今後も金融緩和を要求し続けるのは間違いない。もちろんパウエル氏らFRBの政策担当者は、データ次第だと声をそろえるだろう。FRBは、データを見るために次回のFOMCまで利下げの判断を先送りしたのだ。
●背景となるニュース
*FRBは19日までのFOMCで政策金利を2.25─2.50%に据え置くことを決めた。
*FOMC後に公表された成長率と失業率の見通しは、前回とほぼ同じだった。半面、ドットチャートでは17人のメンバーのうち8人が年内の利下げが適切になるとの見通しを示した。だれも利下げを想定していなかった3月時点からは状況が著しく変化した。
*トランプ大統領は、繰り返しFRBとパウエル議長を批判し、利下げが実施されていれば米経済の成長はもっと高まっただろうとの見方を示している。
*次回FOMCは7月30─31日に開催される。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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