コラム:「タコ足配線」の米独禁法、GAFA監視に効果発揮
Jennifer Saba
[ニューヨーク 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国における反トラスト法(独占禁止法)運用の枠組みはややこしく整合性に欠けるが、そうした特徴がプラスになる場合もある。
フェイスブックとアップルを見ると、2つの連邦機関から反トラスト法違反の調査を受けるだけでなく、近く州レベルでも両社の事業慣行が調べられるかもしれない。連邦政府と州が競合するように調査を進めれば、よりしっかりした成果が確実に得られそうだ。
米司法省のデラヒム次官補は20日、アルファベット子会社グーグル、アップル、フェイスブックなど「GAFA」と呼ばれる米IT大手の市場支配力に関する連邦政府の調査に、十数州の司法長官が協力していることを明らかにした。司法省は7月、IT大手の反トラスト法違反調査に乗り出すと表明。連邦取引委員会(FTC)のシモンズ委員長は必要ならIT大手を分割する用意があると話している。
一般的に言えば、連邦政府機関は反トラスト法問題の対応で関係各方面の足並みをそろえようと調整に動く。実際、1998年に司法省がマイクロソフトを反トラスト法違反で提訴した際には、およそ20州が同調した。だが、逆に対立も起きている。連邦規制当局は、TモバイルUSが260億ドルでスプリントを買収する計画を支持している半面、十数州は買収阻止を求める訴えを起こした。最終的に消費者の携帯電話料金が上がると考えているためだ。
もっとも、こうしたばらばらの動きにはメリットがある。特に連邦規制当局が手を広げ過ぎていたり、反対に「不干渉」に傾いているケースで顕著だ。例えば、カリフォルニア州がトランプ政権よりも厳しい基準を設定している自動車の燃費規制のケースでは、ゼネラル・モーターズ(GM)やトヨタ自動車<7203.T>、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は市場規模の大きさを無視できず、ともかく同州の基準達成を目指すと決定している。
また、同州が近く導入するプライバシー保護の新たな規則は、他の州や最終的には連邦政府の行動の指針になってもおかしくない。
反トラスト法の面から見たIT大手の性質を巡り、連邦、州、下部自治体まであらゆるレベルで意見が一致し、マイクロソフトに対応したような合意が生まれるかもしれない。だが、より現実味があるのは、とりわけ選挙が来年に迫っている事情から、各州が強硬な態度を打ち出して消費者を守っているとの評価を得ようとする展開だろう。1つの反トラスト当局ではなく、多数の相手と格闘する事態を恐れる企業にとって、それは悪夢に違いない。しかし最終目標がIT大手の厳格かつ完全な監視にあるとすれば、決して悪くない方法だ。
●背景となるニュース
*米司法省のデラヒム次官補は20日、グーグルなど「GAFA」と呼ばれる米IT大手の市場支配力に関する連邦政府の調査に、十数州の司法長官が協力していることを明らかにした。
*米連邦取引委員会(FTC)のシモンズ委員長は13日、ブルームバーグのインタビューで、必要ならIT大手を分割する用意があると語った。FTCは、IT大手の調査を主導している。
*司法省は7月23日、IT大手に反トラスト法に抵触する慣行がないかどうか調査に乗り出すと発表した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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